[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2021年(令和3年)九州大学前期-数学(理系)[3]

[3]

座標平面上の点 (x, y) について,次の条件を考える.

条件:すべての実数 t に対して y\leqq e^t -xt が成立する.\cdots\cdots(\ast)

以下の問いに答えよ.必要ならば \displaystyle\lim_{x\to +0} x\log x = 0 を使ってよい.

(1) 条件 (\ast) をみたす点 (x,y) 全体の集合を座標平面上に図示せよ。

(2) 条件 (\ast) をみたす点 (x,y) のうち,x\geqq 1 かつ y\geqq 0 をみたすもの全体の集合を S とする.Sx 軸の周りに1回転させてできる立体の体積を求 めよ.

2021.03.17記

[解答]

(1) f(t)=e^t-xt-y\geqq 0 がすべての実数 t について成立すれば良いので,f(t) の最小値が正であることが必要十分である.f'(t)=e^t-x であるから,

(i) x\leqq 0 のとき任意の実数 t について f'(t)\gt 0 であるから,x\to-\infty の極限を考えて
(a) x\lt 0 のとき \displaystyle\lim_{t\to-\infty} f(t)=-\infty
(b) x=0 のとき \displaystyle\lim_{t\to-\infty} f(t)=-y
だから,「x=0 かつ y\leqq 0」が必要十分条件

(ii) x\gt 0 のとき,下に凸な e^tt=\log x における接線の式は x(t-\log x)+x だから任意の実数 t について e^t\geqq x(t-\log x)+x が成立する.

よって f(t)\geqq x-x\log x-y(等号は t=\log x) となり,f(t) の最小値が正または0であることから,「x\gt 0」かつ y\leqq x-x\log x」となる.

以上から求める領域は x\geqq 0 かつ y\leqq x-x\log x となる.但し,\displaystyle\lim_{x\to +0} x\log x = 0 を使っている.

(図示略)

(2) V=\displaystyle\int_1^e(x-x\log x)^2dx である.
e^u= x と置換すると e^u du = dx だから
V=\displaystyle\int_0^1 (e^u-xe^u)^2 e^u du=\displaystyle\int_0^1 (x-1)^2 e^{3u} du=\Bigl[ \Bigl\{\dfrac{(x-1)^2}{3}-\dfrac{2(x-1)}{9}+\dfrac{2}{27}\Bigr\} e^{3u}\Bigr]_0^1=\dfrac{2}{27}e^3-\dfrac{17}{27}

\displaystyle\int f(x) e^{kx} dx=\displaystyle e^{kx} \sum_{n=0}^{\infty} (-1)^n\dfrac{f^{(n)}}{k^{n+1}}
という公式を使って計算して良いか?ということだが

計算しても良いが一箇所でも間違えていると部分点はもらえない.

と考えるのが妥当だろう.なお,この公式自体は1938年発行の高木貞治の解析概論にも載っているし、それより古い1931年発行の高須鶴三郎の微積分学深義2巻にも載っている歴史のある公式である.