[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1936年(昭和11年)東京帝國大學附屬農業教員養成所-數學

2022.05.22記
3時間

[1](算術)道路450mノ直線區間ノ片側ニ7.5m毎ニポプラノ並樹ヲ植エタガ後ニコレヲ改メテ5m毎ニ植エヨウトスル,前ノ樹ノウチデ植エ更ヘナクテヨイモノハ幾本アルカ.

[2](代數) 次ノ方程式ヲ解ケ.
\sqrt{1+x}-\sqrt{1-x}=1

[3](代數) 二次方程式 x^2+px+q=0 ノ一根ガ他ノ根ノ n 倍ナル為ニハ p,q ノ間ニドンナ關係ガアルベキカ.

[4](幾何) 正三角形 \rm ABC ノ外接圓の弧 \rm BC 上に點 \rm D ヲ取レバ \rm DA=BD+CD ナルコトヲ證明セヨ.

[5](幾何) 相似三角形ノ面積比ハ其ノ内切圓ノ半徑ノ平方比ニ等シイ.


2022.05.22記(2020.03.09に書いた記事と統合)

[解答]
[1] 15m 毎に植えかえなくて良い樹がある.よって直線の両端に植えている場合は、31本、両端には植えていない場合は29本、そのままにして良い樹がある.

問題集の解答は、両端に植えられている場合と片端にだけ植えられている場合の2つに場合分けしていた。

[2] (虚数のルートは1価関数として定義されないので) x は実数とする.このとき
\sqrt{1+x}\gt\sqrt{1-x} と根号内が非負であることから 0\leqq x\leqq 1 である.

このとき
\sqrt{1+x}-\sqrt{1-x}=1
の両辺は正であるから2乗しても同値であり,整理すると
\sqrt{1-x^2}=\dfrac{1}{2}=\sqrt{\dfrac{1}{4}}
となる.よって 0\leqq x\leqq 1 から x=\dfrac{\sqrt{3}}{2}

[別解] 普通に解いても良いが、x=\cos2\theta0\leqq \theta\leqq \dfrac{\pi}{2})とおくと\cos\theta-\sin\theta=\dfrac{1}{\sqrt{2}}
つまり\cos\left(\theta+\dfrac{\pi}{4}\right)=\dfrac{1}{2}=\cos\dfrac{\pi}{3}となり,\theta=\dfrac{\pi}{12}から
x=\cos\dfrac{\pi}{6}=\dfrac{\sqrt{3}}{2}と解いておこう。

[3] 解と係数の関係により,ある複素数 \alpha が存在して
p=-(n+1)\alphaq=n\alpha^2
が成立する.よって np^2=(n+1)^2q が成立すれば良い.

有名すぎる問題.この結果自体に名前があると思うのだが,わからなかった.

[4] 正三角形の1辺の長さを a とすると,トレミーの定理により a\mbox{DA}=\mbox{AD}\cdot\mbox{BC}=\mbox{AB}\cdot\mbox{CD}+\mbox{AC}\cdot\mbox{BD}=a\cdot\mbox{CD}+a\cdot\mbox{BD} だから \rm DA=BD+CD となる.

[5] 三角形をk倍拡大すると、周長はk倍、面積はk^2倍になる。このとき面積が周長×内接円の半徑÷2となることから、内接円の半徑はk倍となる。
よって相似三角形の面積比は半徑の平方比に等しい。

[5] 2つの三角形 \triangle\rm ABC\triangle\rm PQR が相似であるとする.
\triangle\rm ABC の内心を \rm D\rm D から \rm AB に下した垂線の足を \rm E とし,
\triangle\rm PQR の内心を \rm S\rm S から \rm PQ に下した垂線の足を \rm T とする.

このとき\triangle\rm ADE\triangle\rm PST について,
\angle\rm DAE=\dfrac{1}{2}\angle A=\dfrac{1}{2}\angle P=\angle\rm SPT
\angle\rm DEA=90^{\circ}=\angle\rm STP
から \triangle\rm ADE\triangle\rm PST は相似であり,同じ相似比である.
よって内接円の半径の比( \rm DE\rm ST の比)も三角形の相似比に等しい.

よって三角形の面積比
\dfrac{1}{2}{\rm DE}\times({\rm AB+BC+CA}):\dfrac{1}{2}{\rm ST}\times({\rm PQ+QR+RP})
は相似比の2乗に等しく,それは半径の平方比に等しい.