[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1947年(昭和22年)東京帝國大學理學部-數學[1]

2022.07.16記

[1] f(x)xに關する有理整式であって,任意のxhに對して恒等的に
f(x+h)=f(x)+h f'(x+\theta h)
\thetaxhに無關係な定數)
が成立すると云ふ.\thetaの値及びf(x)の形如何.

本問のテーマ

2022.07.16記
現在の出題だと
f''(x) は恒等的に0ではないとする」
と注意書きが入りそうである.

[解答]
f(x+h)=f(x)+hf'(x)+\dfrac{h^2}{2}f''(x)+\dfrac{h^3}{6}f'''(x)+o(h^4)
f’(x+\theta h)=f'(x)+\theta hf''(x)+\dfrac{\theta^2h^2}{2}f'''(x)+o(h^3)
であるから,
f(x)+hf'(x)+\dfrac{h^2}{2}f''(x)+\dfrac{h^3}{6}f'''(x)
=f(x)+h f'(x)+\theta h^2 f''(x)+\dfrac{\theta^2h^3}{2}f'''(x)+o(h^4)
となり,
\dfrac{h^2}{2}f''(x)+\dfrac{h^3}{6}f'''(x)=\theta h^2 f''(x)+\dfrac{\theta^2h^3}{2}f'''(x)+o(h^4)
から
\left(\dfrac{1}{2}-\theta\right) f''(x)=h\cdot \dfrac{3\theta^2-1}{6} f'''(x)+o(h^2)
が任意の h について成立する.

よって
\left(\dfrac{1}{2}-\theta\right) f''(x)=0
が必要である.

(a) f''(x)=0 のとき,f(x)=Ax+B とおけ,条件から
A(x+h)+B=Ax+B+Ah恒等式となり,\thetaは任意

(b) f''(x)\neq 0 のとき,\theta=\dfrac{1}{2} で,
\dfrac{3\theta^2-1}{6} f'''(x)=0
から f'''(x)\equiv 0 が必要である.
このとき,
f(x)=Px^2+Qx+R とおけ,条件から
Px^2+2Phx+Ph^2+Qx+Qh+R=Px^2+Qx+R+h(2P(x+h/2)+Q)
恒等式となり十分である.

以上から
\theta=\dfrac{1}{2}f(x) は2次関数」
または
\theta は任意で f(x) は1次関数か定数関数」
となる.

マクローリン展開を用いないと次のようになる.

[解答]
f(x+h)=f(x)+h f'(x+\theta h)
x および h微分すると
f'(x+h)=f'(x)+h f''(x+\theta h)f'(x+h)=f'(x+\theta h)+h\theta f''(x+\theta h)
が成立するので,
f'(x)+h f''(x+\theta h)=f'(x+\theta h)+\theta h f''(x+\theta h)
つまり
h(1-\theta) f''(x+\theta h)=f'(x+\theta h)-f'(x)
が成立する.

(1) \theta\neq 0のとき
\dfrac{1-\theta}{\theta} f''(x+\theta h)=\dfrac{f'(x+\theta h)-f'(x)}{\theta h}
が任意のx,hについて成立するので,h\to0として
\dfrac{1-\theta}{\theta} f''(x)=f''(x)
が任意の x について成立するので
f''(x)=0 または \dfrac{1-\theta}{\theta}=1\Leftrightarrow \theta=\dfrac{1}{2}
が必要である.

(a) f''(x)=0 のとき,f(x)=Ax+B とおけ,条件から
A(x+h)+B=Ax+B+Ah恒等式となり,\thetaは任意

(b) \theta=\dfrac{1}{2} のとき,k=\dfrac{h}{2}とおくと
kf''(x+k)=f'(x+k)-f'(x)
が任意の x,k について成立する.これを x および k微分すると
kf'''(x+k)=f''(x+k)-f''(x)f''(x+k)+kf'''(x+k)=f''(x+k)
だから
f''(x)=f''(x+k)
が任意の x,k について成立する.つまり f''(x) は定数である.よって f(x) は2次関数である.
このとき,
f(x)=Px^2+Qx+R とおけ,条件から
Px^2+2Phx+Ph^2+Qx+Qh+R=Px^2+Qx+R+h(2P(x+h/2)+Q)
恒等式となり十分である.

(2) \theta=0 のとき,
f(x+h)=f(x)+h f'(x)
が任意の x,h について成立するので
これを x および h微分すると
f'(x)=f'(x+k)
が任意の x,h について成立する.つまり f'(x) は定数である.よって f(x) は1次関数である.
これは,(1)(a)に含まれる.

以上から
\theta=\dfrac{1}{2}f(x) は2次関数」
または
\theta は任意で f(x) は1次関数か定数関数」
となる.

(1)(b)で
f''(x+k)=\dfrac{f'(x+k)-f'(x)}{k} から平均変化率が常に接線の傾きに等しいことからf'(x) は1次関数ということがわかる.