[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1971年(昭和46年)東京大学-数学(理科)[6]

[6] 3人で‘ジャンケン’をして勝者をきめることにする.たとえば,1人が‘紙’を出し,他の2人が‘石’を出せば,ただ1回でちょうど1人の勝者がきまることになる.3人で‘ジャンケン’をして,負けた人は次の回に参加しないことにして,ちょうど1人の勝者がきまるまで‘ジャンケン’をくり返えすことにする.このとき,k 回目に,はじめてちょうど1人の勝者がきまる確率を求めよ.

2021.10.08記
マルコフ過程

[解答]

n 回目のジャンケンの後に3,2人である確率をp_n,q_nとし、p_0=1,q_0=0 とすると,
p_n=\dfrac{1}{3}p_{n-1}…(i),
q_n=\dfrac{1}{3}p_{n-1}+\dfrac{1}{3}q_{n-1}…(ii)
が成立し,求める確率は
\dfrac{1}{3}p_{k-1}+\dfrac{2}{3}q_{k-1}
である.

(i) より p_n=\dfrac{1}{3^{n}} だから
(ii) は q_n=\dfrac{1}{3^n}+\dfrac{1}{3}q_{n-1}となり,Q_n=3^nq_n とおくと
Q_n=1+Q_{n-1},Q_0=0から Q_n=n,つまり q_n=\dfrac{n}{3^n} となる.
よって,求める確率は
\dfrac{1}{3}p_{k-1}+\dfrac{2}{3}q_{k-1}=\dfrac{2k-1}{3^k}
となる.

[大人の解答]

n 回目のジャンケンの後に3,2人である確率をp_n,q_nとし、p_0=1,q_0=0 とすると,このマルコフ過程
\begin{pmatrix} p_n \\ q_n\end{pmatrix}
\begin{pmatrix} 1/3 & 0  \\ 1/3 & 1/3 \end{pmatrix}
\begin{pmatrix} p_{n-1} \\ q_{n-1} \end{pmatrix}
と表現できる.この行列の固有値\dfrac{1}{3} で重解となるので
p_n=\dfrac{\alpha n+\beta}{3^n}q_n=\dfrac{\gamma n+\delta}{3^n}
と表すことができる.
p_0=1,p_1=\dfrac{1}{3} より p_n=\dfrac{1}{3^n}q_0=0,q_1=\dfrac{1}{3} より q_n=\dfrac{n}{3^n}となるので,
求める確率は
\dfrac{1}{3}p_{k-1}+\dfrac{2}{3}q_{k-1}=\dfrac{2k-1}{3^k}
となる.

もちろん,2次の単位行列Iとして
A=\begin{pmatrix} 1/3 & 0  \\ 1/3 & 1/3 \end{pmatrix} とおくと
\left(A-\dfrac{1}{3}I\right)^2=Oから
A^n=\dfrac{n}{3^{n-1}}\left(A-\dfrac{1}{3}I\right)+\dfrac{1}{3^n}I=\dfrac{n}{3^{n-1}}\begin{pmatrix} 0 & 0  \\ 1/3 & 0\end{pmatrix}+\dfrac{1}{3^n}\begin{pmatrix} 1 & 0  \\ 0 & 1\end{pmatrix}=\dfrac{1}{3^n}\begin{pmatrix} 1 & 0  \\ n & 1\end{pmatrix}
となるので,求める確率は
\dfrac{1}{3}(1,2)\begin{pmatrix} p_{k-1} \\ q_{k-1} \end{pmatrix}=\dfrac{1}{3}(1,2)A^{k-1}\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}=\dfrac{1}{3^k}(1,2)\begin{pmatrix} 1 \\ k-1 \end{pmatrix}=\dfrac{2k-1}{3^k}
となる,としても良い.