[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1977年(昭和52年)東京大学-数学(理科)[3]

[3] xy 平面上に,不等式で表される 3 つの領域
A:x\geqq0B:y\geqq0C:\sqrt{3}x+y\leqq\sqrt{3}
をとる.いま任意の点 \mbox{P} に対し,\mbox{P} を中心として ABC のどれか
少くとも 1 つに含まれる円を考える.このような円の半径の最大値は点 \mbox{P} によって定まるから,これを r(\mbox{P}) で表すことにする.

(i) 点 \mbox{P}A \cap C から(A \cap C) \cap B を除いた部分を動くとき,r(\mbox{P}) の動く範囲を求めよ.

(ii) 点 \mbox{P} が平面全体を動くとき,r(\mbox{P}) の動く範囲を求めよ.

2023.08.17記

[解答]
\mbox{O}(0,0)\mbox{S}(1,0)\mbox{T}(0,\sqrt{3}) とおく.

(i) 与えられた領域は A,C に含まれるが B には含まれないので,\mbox{P} を中心として AC のどちらかに
含まれる円の半径の最大値 r(\mbox{P})P から \mbox{TO}\mbox{TS}への距離の小さい方となるので,その値の下限は \mbox{P}\angle\mbox{OTS} の二等分線と \mbox{OS} の交点 \mbox{U} に近づいた極限となる.そして r(\mbox{P}) の値がこの下限より大きい値をすべてとり得ることは,\mbox{P}\angle\mbox{OTS} の二等分線上にとり,\mbox{T} から離れるように連続的に動かせることからわかる.

このときの r(\mbox{P}) の値は \mbox{OU}=\mbox{OS}\cdot\dfrac{\mbox{TO}}{\mbox{TO}+\mbox{TS}}=2\sqrt{3}-3 であるから,求める範囲は r(\mbox{P})\gt 2\sqrt{3}-3

(ii) 領域 X の補集合を \bar{X} で表すことにする.

\mbox{P}\bar{B} のうち (i) でない領域にあるとき,r(\mbox{P})P から \mbox{TO}\mbox{TS}への距離の大きい方となるので,(i) の下限の値より大きくなる.

同様に考えると,点 \mbox{P}\triangle\mbox{OTS} の外部にあるときは,\triangle\mbox{OTS} のそれのれの角の2等分線と対辺の3交点に近づいたときの r(\mbox{P}) の極限のうち一番小さい値より大きくなることがわかる.

よって 点 \mbox{P} が最小となるのは点 \mbox{P}\triangle\mbox{OTS} の内部にあるときで,このとき r(\mbox{P})P から3辺への距離の最大値となる.

よってこの最大値が最小となるのは,点 \mbox{P}\triangle\mbox{OTS} の内心のときとなり,このときの r(\mbox{P})
r(\mbox{P})=\dfrac{\triangle\mbox{OST}}{\mbox{OS}+\mbox{ST}+\mbox{TO}}=\dfrac{\sqrt{3}-1}{2} となる.
そして r(\mbox{P}) の値がこの最小値より大きい値をすべてとり得ることは,\mbox{P}\angle\mbox{OTS} の二等分線上にとり,\mbox{T} から離れるように連続的に動かせることからわかる.

よって求める範囲は r(\mbox{P})\gt \dfrac{\sqrt{3}-1}{2} となる.