[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2001年(平成13年)東京大学前期-数学(理科)[1]

2020.09.03記

[1] 半径 r の球面上に4点 \mbox{A}\mbox{B}\mbox{C}\mbox{D} がある.四面体 \mbox{ABCD} の各辺の長さは,
\mbox{AB}=\sqrt{3}\mbox{AC}=\mbox{AD}=\mbox{BC}=\mbox{BD}=\mbox{CD}=2
を満たしている.このとき r の値を求めよ.

本問のテーマ
ユークリッド距離行列と Cayley-Menger 行列

2020.09.03記
外接球の半径は
外接超球面の半径 - 球面倶楽部 零八式 mark II
という公式から求めることができるが,これは各点を座標におかなければならない.

まずは普通に解いてから,大人の解法を説明しよう.

第一手は、球面の中心がどこにあるかを探ることである。

[解答]
球の中心を {\rm O} とし,{\rm CD} の中点を {\rm M} とすると {\rm OC=OD} により {\rm O}{\rm CD} の垂直2等分面,つまり平面 {\rm ABM} 上にある. {\rm AB} の中点を {\rm N} とすると, {\rm OA=OB} により {\rm O}{\rm AB} 垂直2等分面上にある.よって, {\rm O}\triangle{\rm ABM} の中線 {\rm MN} 上にある.

さて, \triangle{\rm ACD} は正3角形なので {\rm AM}=\sqrt{3} となる.同様に {\rm BM}=\sqrt{3} であるから \triangle{\rm ABM} は一辺が \sqrt{3} の 正3角形となり {\rm OM+ON=MN}=\dfrac{3}{2} が成立する.

ここで {\rm OC}^2={\rm OM}^2+{\rm MC}^2 により r^2={\rm OM}^2+1 であり, {\rm OA}^2={\rm ON}^2+{\rm NA}^2 により r^2={\rm ON}^2+\dfrac{3}{4} であるから,

{\rm OM}^{2}+1={\rm ON}^{2}+\dfrac{3}{4}
{\rm ON}^{2}-{\rm OM}^{2}=\dfrac{1}{4}
{\rm ON}-{\rm OM}=\dfrac{1}{6}

が成立する。よって{\rm ON}=\dfrac{5}{6} となり r^2=\dfrac{13}{9},つまり r=\dfrac{\sqrt{13}}{3} となる.

座標にのせるのも良いだろう.

[別解]
{\rm CD} の中点を{\rm M} とすると{\rm AM=BM=\sqrt{3}} であるから {\rm \triangle ABC} は正3角形である。

よって
{\rm A}\Bigl(-\dfrac{1}{2},\,\dfrac{\sqrt{3}}{2},\,0\Bigr){\rm B}\Bigl(-\dfrac{1}{2},\,-\dfrac{\sqrt{3}}{2},\,0\Bigr){\rm M}(1,\,0,\,0){\rm C}(1,\,0,\,1){\rm D}(1,\,0,\,-1)
とおくことができる.

\rm A,B,C,D を通る球の方程式を
 x^2+y^2+z^2+ax+by+cz=d
とおくと \rm A,B,C,D の座標を代入することにより
 1-\dfrac{1}{2}a+\dfrac{\sqrt{3}}{2}b=d 1-\dfrac{1}{2}a-\dfrac{\sqrt{3}}{2}b=d
 2+a+c=d 2+a-c=d
となる.よって a=-\dfrac{2}{3}b=c=0d=\dfrac{4}{3} となり,
球の方程式は
 x^2+y^2+z^2-\dfrac{2}{3}x=\dfrac{4}{3}
つまり,
\Bigl(x-\dfrac{1}{3}\Bigr)^2+y^2+z^2=\dfrac{13}{9}
となる.よって球の半径は \dfrac{\sqrt{13}}{3} となる.

四面体の外接球の半径を6辺の長さで表す - 球面倶楽部 零八式 mark II
のように,公式化することができる.

[大人の解答]
四面体の辺の長さを a=b=c=x=y=2,z=\sqrt{3}とおく.

四面体の体積を V とすると,公式から
R^2=\dfrac{1}{(24V)^2}(ax+by+cz)(-ax+by+cz)\times (ax-by+cz)(ax+by-cz)=\dfrac{1}{(24V)^2}(8+2\sqrt{3})\cdot 2\sqrt{3}\cdot 2\sqrt{3}\cdot (8-2\sqrt{3})=\dfrac{16}{(24V)^2}\cdot 3(16-3)=\dfrac{13}{12V^2}
となる.

四面体の体積 V は,\rm AB の中点を \rm N\rm CD の中点を \rm M としたとき,\dfrac{1}{6}{\rm AB\cdot MN\cdot CD}(3つの線分は互いに垂直)であり,\rm MN=\dfrac{3}{2} が簡単な計算からわかるので,V=\dfrac{\sqrt{3}}{2} となるから,R=\dfrac{\sqrt{13}}{3}

大人の解法が簡単に答えが出るという訳ではないが,機械的に答えが出る.
なお,R=\dfrac{1}{24V}\sqrt{\{(ax)^2+(by)^2+(cz)^2\}^2-2\{(ax)^4+(by)^4+(cz)^4)\}}=\dfrac{1}{24V}\sqrt{(4^2+4^2+12)^2-2(4^4+4^4+9\cdot 2^4)}=\dfrac{1}{6V}\sqrt{(4+4+3)^2-2(4^2+4^2+9)}=\dfrac{1}{6V}\sqrt{121-2\cdot 41}=\dfrac{\sqrt{39}}{6V}

R=\dfrac{1}{24V}\sqrt{2\{(abxy)^2+(bcyz)^2+(cazx)^2\}-\{(ax)^4+(by)^4+(cz)^4\}}
と計算しても良い.

四面体の体積も公式
四面体の体積を求めるオイラーの公式 - 球面倶楽部 零八式 mark II
を使えばより機械的である.

z=\sqrt{3} で残りを 2 とすると
 V^2=\dfrac{1}{288}{\rm det} \begin{pmatrix} 8 & 5 & 4 \\ 5  &  8 & 4 \\ 4 & 4 & 8 \\ \end{pmatrix} =\dfrac{1}{288}{\rm det} \begin{pmatrix} 3 & -3 & 0 \\ 5  &  8 & 4 \\ -6 & -12 & 0 \\ \end{pmatrix} =\dfrac{1}{72}{\rm det} \begin{pmatrix} 3 & -3 & 0 \\ 0  &  0 & 1 \\ -6 & -12 & 0 \\ \end{pmatrix} =\dfrac{-1}{4}{\rm det} \begin{pmatrix} 1 & -1 \\ -1 & -2  \end{pmatrix}=\dfrac{3}{4}となり,V=\dfrac{\sqrt{3}}{2} となる.