[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1986年(昭和61年)東京大学-数学(文科)[4]

2023.08.29記

[4] 平面 \mbox{S} の一点 \mbox{A} と正数 \alpha\alpha\lt 180)をとる.点の集合としての \mbox{S} から \mbox{S} への写像 \varphi が,次の三つの条件(i),(ii),(iii)をみたすとき,\varphi\mbox{A} を中心とする正の向きの \alpha^{\circ} 回転と呼ばれる.

(i) \varphi(\mbox{A})=\mbox{A}

(ii) \mbox{S} の任意の点 \mbox{P}\neq\mbox{A})に対し,\mbox{A}\mbox{P}=\mbox{A}\varphi(\mbox{P})\angle\mbox{P}\mbox{A}\varphi(\mbox{P})=\alpha^{\circ}

(iii) 人が三角形 \mbox{P}\varphi(\mbox{P})\mbox{A} の周を一周し,tex:\mbox{P}],\varphi(\mbox{P})\mbox{A} の順序に頂点を通るとき,三角形の内部は常に人の左側にある.

いま \mbox{S} 上に相異なる二点 \mbox{A}\mbox{B} をとり,\mbox{A} を中心とする正の向きの 60^{\circ} 回転を f\mbox{B} を中心とする正の向きの 60^{\circ} 回転を g とする.これに対し,fg の合成写像 h=g \circ f が,h(\mbox{P})=g(f(\mbox{P})) によって定義される.

(1) このとき,点 h(\mbox{A}0h(\mbox{B}) は,\mbox{A}\mbox{B} に対して,どのような位置にあるかを求め,図示せよ.

(2) hはある点 \mbox{O} を中心とする正の向きの回転であることを示し,点 \mbox{O} および回転角を求めよ.

2021.01.20記
回転の中心がどこであっても,ベクトルの向きは回転角だけで決まるので,
60度回転を2回続けて行うと,120度回転になる.

[解答]
(1) f({\rm B)}={\rm C}g({\rm A)}={\rm D} とおくと,\triangle\rm ABC\triangle\rm ADB が正三角形となるので,
f({\rm D)}={\rm B}g({\rm C)}={\rm A} が成立する.よって
h({\rm A})=g\circ f({\rm A})=g({\rm A})={\rm D} となり,これは {\rm A} を,{\rm B} 中心に正の向きに60度回転した点である.
h({\rm B})=g\circ f({\rm B})=g({\rm C})={\rm A} となる.

(2) \triangle\rm ADB の重心を {\rm G}\triangle\rm ABC の重心を {\rm K} とし,ベクトルを60度回転する行列をR とする.

h{\rm A}{\rm D} に,{\rm B}{\rm A} にうつすので,{\rm G} を中心とする正の向き120度回転と予想できる.

平面上の任意の点 \rm P に対して,
 R\overrightarrow{\rm GP}=R\overrightarrow{\rm AP}-R\overrightarrow{\rm AG}=\overrightarrow{{\rm A}f({\rm P})}-\overrightarrow{\rm AK}=\overrightarrow{{\rm K}f({\rm P})}
が成立する.同様に,平面上の任意の点 \rm Q に対して,
R\overrightarrow{\rm KQ}=\overrightarrow{{\rm G}g({\rm Q})}
が成立する.よって {\rm Q}=f({\rm P}) として,

平面上の任意の点 \rm P に対して,
R^2\overrightarrow{\rm GP}=R\overrightarrow{{\rm K}f({\rm P})}=\overrightarrow{{\rm G}h({\rm P})}
が成立する.

よって,平面上の任意の点 \rm P に対して,h({\rm P}){\rm P}\rm G 中心に正の向きに120度回転した点となるので,
h\rm G 中心に正の向きに120度回転する変換である.

複素数でやると簡単である.

[別解]
複素平面で考える.
r=\cos 60^{\circ}+i\sin 60^{\circ} とおくと r^3=-1 である.

\triangle\rm ADB の重心を {\rm G}(0) とし,{\rm A}(a){\rm B}(b) とすると,
\rm A\rm G 中心に \rm B を正の向きに120度回転した点だから
a=r^2b が成立し,よって ra+b=r(a-r^2b)=0 が成立する.

このとき,h:z\mapsto w
 w=r\{r(z-a)+a-b\}+b=r^2z+(1-r)(ra+b)=r^2 z
となるので h{\rm G}(0) 中心に正の向きに120度回転する変換である.