[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1991年(平成3年)東京大学前期-数学(理科)[3]

2024.01.04記

[3] 定数 p に対して,3次方程式 x^3-3x-p=0 の実数解の中で最大のものと最小のものとの積を f(p) とする.ただし,実数解がただひとつのときには,その2乗を f(p) とする.

(1) p がすべての実数を動くとき,f(p) の最小値を求めよ.

(2) p の関数 f(p) のグラフの概形をえがけ.


2024.01.05記

[解答]
g(x)=x^3-3x とおき,y=g(x)y=p の交点の x 座標について考えれば良いが,g(x) は奇関数であるから,f(p) は偶関数となる.よって p\geqq 0 で考える.

(1) (i) 0\leqq p\leqq 2 のとき:
g(x)=p の3実解を \alpha\leqq \beta\leqq \gamma とおくと解と係数の関係から
\alpha+\beta+\gamma=0(\alpha+\gamma)\beta+\gamma\alpha=-3p=\alpha\beta\gamma
となる.よって
\beta=-(\alpha+\gamma)
f(p)=\alpha\gamma=\beta^2-3
p=\beta^3-3\beta(これは\betag(x)=pの解だから当然成り立つ)

y=g(x) のグラフより -1\leqq\beta\leqq 0 だから,\beta=0 のとき f(p) は最小値 -3 をとる.

(ii) p\gt 2 のとき:
g(x)=pの実数解は1つでそれは正の値だから f(p)\gt 0 となる.

以上から,f(p)\beta=0,つまり p=0^3-3\cdot 0=0 のときに最小値 0 をとる.

(2) (i) 0\leqq p\leqq 2 のとき:
p0 から 2 に増加すると \beta0 から -1 に減少するので f(p)=\beta^2-3-3 から -2 まで単調に増加することはわかるが,凹凸も調べるために微分する)

p\gt 0 のとき \beta\gt 0
f'(p)=\dfrac{\dfrac{df}{d\beta}}{\dfrac{dp}{d\beta}}=\dfrac{2\beta}{3(\beta^2-1)}

\beta -1 \cdots 0
p 2 \nwarrow 0
f'(p) +\infty \nwarrow 0
f(p) -2 \nwarrow -3

と変化するが,p の増加に従って f'(p) も増加するので q=f(p) のグラフは下に凸であることがわかる.

(ii) p\gt 2 のとき:
p=g(x)=x^3-3xp\gt 2)の逆関数x=h(p)x\gt 2)としたときの q=x^2(=h(p)^2) のグラフを描けば良い.

p=g(x) は単調増加だから x=h(p) も単調増加であり,q も単調増加である.

\dfrac{dq}{dp}=\dfrac{\dfrac{dq}{dx}}{\dfrac{dp}{dx}}=\dfrac{2x}{3(x^2-1)}
=\dfrac{2}{3(x-1/x)}((i)と同じ)
x-\dfrac{1}{x}x\gt 0 で単調増加であることに注意すると\dfrac{dq}{dp}x\gt 2 で単調減少となり,よって q=x^2 のグラフは上に凸であることがわかる.

また,十分大きな p に対して p\approx x^3 だから q\approx\sqrt[3]{p^2} となるので
x\to\inftyq\to\infty だから

x 2 \cdots (+\infty)
p 2 \nearrow (+\infty)
dq/dp 4/9 \swarrow (0)
f(p) -2 \nwarrow (+\infty)

となる.

以上と,f(p) が偶関数であることから,f(p)のグラフは次図となる.



(2)(i) 凹凸については f'(p)p に関して単調増加なのでf''(p) を計算しなくても下に凸であることがわかるが,
f''(p)=\dfrac{\dfrac{d}{d\beta}\left(\dfrac{2\beta}{3(\beta^2-1)}\right)}{\dfrac{dp}{d\beta}}=-\dfrac{2(\beta^2+1)}{9(\beta^2-1)^3}
が正であることから下に凸であることを示すこともできる(面倒ではあるが).

結局,パラメータ表示された曲線のグラフを描いていることわかるので,最初からそのように考えれば良い.

[別解](凹凸は調べない)
(2) (i) 0\leqq p\leqq 2 のとき:
p=\beta^3-3\betaf(p)=\beta^2-3-1\leqq \beta\leqq 0
により,パラメータ表示された曲線
(t^3-3t,t^2-3)-1\leqq t\leqq 0
を描けば良い.

(ii) 2\gt p のとき:
p=x^3-3xf(p)=x^2x\gt2
により,パラメータ表示された曲線
(t^3-3t,t^2-3)t \gt 2
を描けば良い.

ここで,t の範囲を考えなければ,(ii)のグラフは(i)のグラフを f(p) 軸方向に -3 平行移動したものであるから,まずは (t^3-3t,t^2-3)t\in\mathbb{R})の曲線を描くことにする.

p=A(t)=t^3-3tf(p)=B(t)=t^2 とおくと

t (-\infty) \cdots -1 \cdots 0 \cdots 1 \cdots (+\infty)
A'(t) + 0 - - - 0 +
p (-\infty) \rightarrow 2 \leftarrow 0 \leftarrow -2 \rightarrow (+\infty)
B'(t) - - - 0 + + +
f(p) (+\infty) \downarrow 1 \downarrow 0 \uparrow 1 \uparrow (+\infty)
(p,f(p)) (-\infty,+\infty) \searrow (2,1) \swarrow (0,0) \nwarrow (-2,1) \nearrow (+\infty,+\infty)

となる.

また,
A(t)B'(t)-A'(t)B(t)=(t^3-3t)\cdot 2t - (3t^2-3)\cdot t^2=-t^4-3t^2\lt 0
t\in\mathbb{R})であるから,曲線は t が増加すると常に右に曲がるように描かれる.

以上から 曲線 (t^3-3t,t^2-3)t\in\mathbb{R})のグラフは




のようになる.このグラフの,「|t|\gt 2 の部分」と「|t|\leqq 1の部分を縦軸方向に -3平行移動したもの」を合わせたグラフが (p,f(p)) のグラフとなるので求めるグラフは次図.