[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2005年(平成17年)東京大学前期-数学(理科)[5]

2024.02.18記

[5] N を1以上の整数とする.数字 12,……,N が書かれたカードを1枚ずつ,計 N 枚用意し,甲,乙のふたりが次の手順でゲームを行う.

(i) 甲が 1 枚カードをひく.そのカードに書かれた数を a とする.ひいたカードはもとに戻す.

(ii) 甲はもう 1 回カードをひくかどうかを選択する.ひいた場合は,そのカードに書かれた数を b とする.ひいたカードはもとに戻す.ひかなかった場合は,b=0 とする.a+b\gt N の場合は乙の勝ちとし,ゲームは終了する.

(iii) a+b\leqq N の場合は,乙が 1 枚カードをひく.そのカードに書かれた数を c とする.ひいたカードはもとに戻す.a+b\lt c の場合は乙の勝ちとし,ゲームは終了する.

(iv) a+b\geqq c の場合は,乙はもう 1 回カードをひく.そのカードに書かれた数を d とする.a+b\lt c+d \leqq N の場合は乙の勝ちとし,それ以外の場合は甲の勝ちとする.

(ii)の段階で,甲にとってどちらの選択が有利であるかを,a の値に応じて考える.以下の問いに答えよ.

(1) 甲が 2 回目にカードをひかないことにしたとき,甲の勝つ確率を a を用いて表せ.

(2) 甲が2 回目にカードをひくことにしたとき,甲の勝つ確率を a を用いて表せ.

ただし,各カードがひかれる確率は等しいものとする.

2024.02.18記
ブラックジャック様のゲームのモデル化ということで当時話題になった.甲が勝つためには乙が2枚カードを引かなければならないことがポイントとなる.

[解答]
(1) 甲が勝つ必要十分条件は,c+d\leqq a または 「c\leqq a かつ c+d\geqq N+1」となることである.

c=kk=1,2,…,a)で固定すると
1\leqq d\leqq a-k または N+1-k\leqq d\leqq N
となることで,これをみたす d(a-k)+k=a 通りあり,これは k にはよらない.

よって題意をみたす (c,d) の組み合わせは a^2 通りあることとなり,求める確率は \dfrac{a^2}{N^2} となる.

(2) a=1,…,N-1 に対して b1から[tex:N-a までの可能性があり,そのそれぞれに対して甲が勝つ場合の数は (a+b)^2 となる.

よって,甲が勝つ場合の数は a+b=m とおくと
\displaystyle\sum_{b=1}^{N-a}  (a+b)^2=\displaystyle\sum_{m=a+1}^{N}  m^2=\dfrac{N(N+1)(2N+1)-a(a+1)(2a+1)}{6}
となるので,求める確率は
\dfrac{N(N+1)(2N+1)-a(a+1)(2a+1)}{6N^3}
となる.