[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2006年(平成18年)東京大学前期-数学(文科)[4]

2020.04.01記

[4] \theta は,0^{\circ}\lt \theta\lt {45}^{\circ} の範囲の角度を表す定数とする.-1\leqq x\leqq 1 の範囲で,関数
f(x)=|x+1|^3+|x-\cos 2\theta|^3+|x-1|^3
が最小値をとるときの変数 x の値を,\cos\theta で表せ.

本問のテーマ
最小3乗基準による代表値

2020.04.01記
最小1乗基準(最小絶対偏差基準)による代表値は
 |x+1|+|x-\cos 2\theta|+|x-1|
の最小値を与える x となり,それは中央値
 x=\cos2\theta
となる.

最小2乗基準による代表値は
 |x+1|^2+|x-\cos 2\theta|^2+|x-1|^2
の最小値を与える x となり,それは中央値
 x=\dfrac{\cos2\theta}{3}
となる.

このことの例題として
1958年(昭和33年)東京大学-数学(解析II)[2] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
を挙げておく.

では、最小3乗基準による代表値はどうだろうか,という問題。残念ながらその答が統計量として使われている訳ではないし,一般的な場合を簡単には書くのが難しい.

下に凸な関数f(x) の最小値を与える x は唯一で、これが -1\leqq x\leqq 1 の範囲にあるのは明らかで、既に問題文に与えらえれている。

[解答]
 f(x)=6x^2+2+|x-\cos 2\theta|^3 は、 6x^2+2x=0 で最小、 |x-\cos 2\theta|^3x=\cos 2\theta0\lt\cos 2\theta\lt 1)で最小となるので、 f(x)0\lt x\lt \cos 2\theta のどこかで最小となる。

この範囲では f(x)=6x^2+2-(x-\cos 2\theta)^3 であるから、 f'(x)=12x-3(x-\cos 2\theta)^2=0つまり、
 x^2-2(\cos 2\theta+2)x+\cos^2 2\theta=0の2解のうち、-1\leqq x\leqq \cos 2\theta の範囲にあるものが求める x である.よって
 x=\cos 2\theta+2-\sqrt{4\cos2\theta+4} =2\cos^2 \theta+1-2\sqrt{2\cos^2\theta} =2\cos^2 \theta+1-2\sqrt{2}\cos\theta(∵ 0\lt\cos \theta

なお、1乗の場合  x=\cos2\theta で最小、2乗の場合  x=\dfrac{\cos2\theta}{3} で最小となり、値が小さくなっていることから、
3乗の場合はより小さくなっていると予想される。実際、3倍して比較すると
 \cos2\theta-3(2\cos^2 \theta+1-2\sqrt{2}\cos\theta) =-4\cos^2\theta-4+6\sqrt{2}\cos\theta) =-4\left(\cos\theta -\dfrac{1}{\sqrt{2}}\right)(\cos\theta-\sqrt{2})
 0^{\circ}\lt \theta\lt{45}^{\circ} において正となっている。

さらに4乗、5乗、と続けていった極限はどうなるだろうか?最小「無限大」乗の場合は、無限大ノルムが最大値となることから、ミニマックス基準となる、つまり最大値と最小値の真ん中が答えとなるので、x=0 において最小となる。

無限大ノルムが絶対値が最大なものになることは
1943年(昭和18年)東京帝國大學理學部-數學[1] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
を参照のこと。