[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2006年(平成18年)東京大学前期-数学(理科)[3]

本問のテーマ
折り紙による角の3等分(2021.02.02)
tan の n 倍角と二項定理(2021.02.02)

2021.02.02記
一般に定木(目盛がない直線)とコンパスのみを用いて任意の角度を3等分することができないことはギリシア3大難問として知られている.定木とコンパスで作図できる数は四則演算と平方根の組み合わせだけであるから,立方根なしでは表現できない数を作図することはできず,角度を3等分するには、3倍角の公式から導かれる3次方程式の解を作図できなければならないので、整数係数の (1次式)×(2次式)=0 の形に因数分解できない3次方程式の解は作図できないことが知られている.この問題はガロア理論へと続いていく.

しかし,折り紙を用いると任意の鋭角は3等分できることが知られている.例えば
shochandas.xsrv.jp
を参照すれば良い.

本問は折り紙を用いた角の3等分において,同じ間隔で2回折る部分が \rm P の場所に相当し,1つ目の折り目が y=1 だから,2つ目の折り目が y=2 となり,よって p=2 となる訳である.

なお,本問では3等分に関連して tan の3倍角が必要となるが,
\tan n\theta=\dfrac{\mbox{Im}[(\cos\theta+i\sin\theta)^2]}{\mbox{Re}[(\cos\theta+i\sin\theta)^2]}
であるから,
\tan 3\theta=\dfrac{3\cos^2\theta\sin\theta-\sin^3\theta}{\cos^3\theta-3\cos\theta\sin^2\theta}=\dfrac{3\tan\theta-\tan^3\theta}{1-3\tan^2\theta}
となる.

[解答]
(1) ly 切片を {\rm S}(0,s) とし,\alpha=\tan\varphi とおき,\vec{e}=\begin{pmatrix} \cos\varphi\\ \sin\varphi\end{pmatrix} とおく.

このとき {\rm X}(0,y)l に関する対称点の座標 {\rm X}'(X,Y) について \vec{{\rm XX}'}\cdot\vec{e}=0\vec{\rm SX}+\vec{{\rm SX}'}\parallel \vec{e} だから,
X\cos\varphi+(Y-y)\sin\varphi=0 X\sin\varphi=(Y+y-2s)\cos\varphi
となり,
X+\alpha(Y-y)=0 \alpha X=(Y+y-2s)

{\rm O} の像が {\rm Q}(q,1) により,q+\alpha=0 \alpha q=(1-2s) となり,2s=1+\alpha^2 となる.

{\rm P} の像 {\rm R}(x_r,y_r) について
x_r+\alpha(y_r-p)=0 \alpha x_r=(y_r+p-2s) となり,
\tan\theta=\dfrac{y_r}{x_r} であるから,
x_r+\alpha(x_r\tan\theta -p)=0 \alpha x_r=(x_r\tan\theta_r+p-2s) となり,
(1+\alpha\tan\theta)x_r=\alpha p (\tan\theta-\alpha) x_r=2s-p=1+\alpha^2-p となり,
(1+\alpha^2-p)(1+\alpha\tan\theta)=\alpha p(\tan\theta -\alpha)
となる.よって
\tan\theta= -\dfrac{(p+1)\alpha^2p+1-p}{\alpha^3+(1-2p)\alpha}

(2) \tan\dfrac{\theta}{3}=-\dfrac{1}{\alpha} であるから,
\tan\theta=\dfrac{3\tan(\theta/3)-\tan^3(\theta/3)}{1-3\tan^2(\theta/3)}=\dfrac{-3\alpha^2+1}{\alpha^3-3\alpha}
となり,任意の \alpha に対して
 -\dfrac{(p+1)\alpha^2p+1-p}{\alpha^3+(1-2p)\alpha}=\dfrac{-3\alpha^2+1}{\alpha^3-3\alpha}
が成立するような p を求めれば良い.

この式は分母を払って整理すると
(p-2)(t^2+1)^2t=0
となるので,そのような p は存在し,p=2 である.