[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2011年(平成23年)東京大学前期-数学(理科)[3]

本問のテーマ
ロピタルの定理(2020.10.17)
双曲螺旋(2020.10.18)
有理関数の積分\sqrt{x^2+1}積分(2020.10.18)

双曲線関数を用いた\sqrt{x^2+1}積分はまた今度

2020.10.16記(2022.03.15修正)

[解答]

(1) 半径 t の円の弧長 L に対する中心角は \dfrac{L}{t} だから
u(t)=t\cos\dfrac{L}{t}v(t)=t\sin\dfrac{L}{t}

(2) 単純計算により \{u'(t)\}^2+\{v'(t)\}^2=1+\dfrac{L^2}{t^2} だから
\displaystyle\int_a^1\sqrt{1+\dfrac{L^2}{t^2}}dt
を求めれば良い.

\sqrt{t^2+L^2}=s と置換して部分分数分解すると
\Bigl[s+\dfrac{L}{2}\log\dfrac{s-L}{s+L}\Bigr]_\sqrt{a^2+L^2}^{\sqrt{1+L^2}}
となって,
f(a)=\sqrt{1+L^2}-\sqrt{a^2+L^2}+L\Bigl\{ \log(\sqrt{1+L^2}-L)-\log\dfrac{\sqrt{a^2+L^2}-L}{a}\Bigr\}
となる.

(3)
\dfrac{\sqrt{1+L^2}-\sqrt{a^2+L^2}+L\Bigl\{ \log(\sqrt{1+L^2}-L)-\log\dfrac{\sqrt{a^2+L^2}-L}{a}\Bigr\}}{\log a}
=\dfrac{\sqrt{1+L^2}+L\log(\sqrt{1+L^2}-L)}{\log a}-\dfrac{\sqrt{a^2+L^2}+L\log(\sqrt{a^2+L^2}-L)}{\log a}-L
において a\to +0\log a\to -\infty だから
極限をとると -L となる.


2020.10.17記

(2) で具体的な f(a) を求めているので,極限を求めるのは簡単だが,(2) は面倒なので (3) を解いて部分点を狙うのであれば,使用条件に注意してロピタルの定理を使うという手もある.

[大人の解答]

(3) は分子が+\infty、分母が-\infty となるので,ロピタルの定理の条件をみたしている.よって
\displaystyle\lim_{a\to+0}\dfrac{f(a)}{\log {a}}\displaystyle =\lim_{a\to+0}\dfrac{-\sqrt{1+\dfrac{L^2}{a^2}}}{1/a}\displaystyle =\lim_{a\to+0}(-\sqrt{a^2+L^2})=-L

大学受験でロピタルの定理は使って良いかというのは良く話題になるが,基本的に正しく使えていれば減点する理由はないというのが一般的な考え方.

単に「ロピタルの定理より」とするより、
「分子が+\infty、分母が-\infty となるので,ロピタルの定理の条件をみたしている」(+0の近傍で分母が0にならないことは -\infty に行くので明らか)とすれば、ロピタルの定理の成立条件を確認していることが伝わるので、理解して使っているアピールはすべきと個人的には考える.

ロピタルの定理を使うなら,コーシーの平均値の定理で間に合う問題が多いが,本問の場合はちょっと面倒である.大学入試だと

(3) g(a)=\left\{\begin{array}{ll} \dfrac{1}{f(a)} & (a\gt 0) \\ 0 & (a=0) \end{array}\right.
h(a)=\left\{\begin{array}{ll} \dfrac{1}{\log a} & (a\gt 0) \\ 0 & (a=0) \end{array}\right.
とおくと,g(a),h(a)a \geqq 0 で連続である.

このとき,
\displaystyle\lim_{a\to+0}\dfrac{f(a)}{\log {a}}\displaystyle=\lim_{a\to+0}\dfrac{h(a)}{g(a)}\displaystyle=\lim_{a\to+0}\dfrac{h(a)-h(0)}{g(a)-g(0)}
だから,コーシーの平均値の定理により,
\dfrac{f(a)}{\log {a}}=\dfrac{h’(c)}{g'(c)}=\Bigl(\dfrac{f(c)}{\log c}\Bigr)^2\cdot\dfrac{1/c}{f'(c)}=\Bigl(\dfrac{f(c)}{\log c}\Bigr)^2\cdot
\dfrac{1}{-\sqrt{c^2+L^2}}
なるc0\lt c\lt a)が存在する.

よって a\to 0c\to 0 だから,
\displaystyle\lim_{a\to+0}\dfrac{f(a)}{\log {a}}\displaystyle=\lim_{a\to+0}\dfrac{\log a}{f(a)}\cdot \Bigl(\dfrac{f(c)}{\log c}\Bigr)^2\displaystyle=\lim_{c\to+0}(-\sqrt{c^2+L^2})=-L

とすれば良いだろう.

2020.10.18記

双曲螺旋

曲線名は「双曲螺旋」

双曲螺旋の極方程式は r=\dfrac{a}{\theta}a\neq 0,0\lt\theta)である.
a=L,\theta=\dfrac{L}{t} とおくと,
x=\dfrac{a}{\theta}\cos\theta=t\cos\dfrac{L}{t}y=\dfrac{a}{\theta}\cos\theta=t\sin\dfrac{L}{t} と本問のパラメータ表示が得られる.

t\to\infty(x,y)=(0,L) だから漸近線 y=L をもつ.


なお,
\displaystyle\int\sqrt{1+\dfrac{L^2}{t^2}}dt
積分するのに,先ほどの
\sqrt{t^2+L^2}=s の置換以外にも,
 t=L\tan\theta
t=L\sinh \theta = L\dfrac{e^{\theta}-e^{-\theta}}{2}
u=\dfrac{L}{t}+\sqrt{1+\dfrac{L^2}{t^2}}
 u=\dfrac{1}{2}\Bigl(t-\dfrac{L^2}{t}\Bigr)
 u=t+\sqrt{t^2+L^2}
など色々考えられる.

有理関数の積分\sqrt{x^2+1}積分

さて,y=\sqrt{x^2+1}不定積分を求める話は,双曲線 y^2-x^2=1 上の有理点を求める話と同じ話で,双曲線が (f(t),g(t)) と有理関数 f(t),g(t) でパラメータ表示できたとする(t有理数とすると双曲線上の有理点が求まる)と,
\displaystyle\int y dx = \int g(t) f'(t) dt
t の有理関数の積分に帰着できることがわかる.

双曲線y^2-x^2=1の有理関数によるパラメータ表示の1つは
x=\dfrac{1}{2}\Bigl(t-\dfrac{1}{t}\Bigr)y=\dfrac{1}{2}\Bigl(t+\dfrac{1}{t}\Bigr)
である.1次変換による双曲線 \dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1 の像を考えるとき,
\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}=s\begin{pmatrix} a \\ b \end{pmatrix}+t \begin{pmatrix} a \\ -b \end{pmatrix}st=\dfrac{1}{4}
とパラメータ表示できることが,雑誌「大学への数学」の記事にあってなるほどと思った記憶があるが,これと同じ話である.

さて,この積分において双曲線の第1象限について考えれば十分で,このとき t\gt1であり,t=x+\sqrt{x^2+1} となる.

そして,
\displaystyle\int \sqrt{x^2+1} dx = \int \dfrac{1}{2}\Bigl(t+\dfrac{1}{t}\Bigr) \cdot \dfrac{1}{2}\Bigl(1+\dfrac{1}{t^2}\Bigr) dt
\displaystyle =\dfrac{1}{4}\int \Bigl(t+\dfrac{2}{t}+\dfrac{1}{t^3}\Bigr)dt
\displaystyle =\dfrac{1}{8}\Bigl(t^2+4\log t -\dfrac{1}{t^2}\Bigr)
となる.

ここで,t^2=2x^2+1+2x\sqrt{x^2+1}\dfrac{1}{t^2}=2x^2+1 -2x\sqrt{x^2+1} だから,
\displaystyle =\dfrac{1}{8}\Bigl(4x\sqrt{x^2+1} +4\log  (x+\sqrt{x^2+1}) \Bigr)\displaystyle =\dfrac{1}{2}\Bigl(x\sqrt{x^2+1} +\log  (x+\sqrt{x^2+1}) \Bigr)
不定積分を求めることができる.

同じように,\sin\theta,\cos\theta の有理関数 f(\cos\theta,\sin\theta) に対して,\tan\dfrac{\theta}{2}=t とおくと,
\cos\theta=\dfrac{1-t^2}{1+t^2},\sin\theta=\dfrac{2t}{1+t^2},\dfrac{d\theta}{dt}=\dfrac{2}{1+t^2}
だから,
\displaystyle\int f(\cos\theta,\sin\theta) d\theta
t の有理式の積分と書け,部分分数分解を経由して,必ず積分することができる,というのも同じ原理である.