[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1993年(平成5年)東京大学前期-数学(文科)[4]

2020.07.20記

[4]  0\leqq t\leqq 2 の範囲にある  t に対し,方程式  x^4-2x^2-1+t=0 の実数解のうち最大のものを g_1(t),最小のものを  g_2(t) とおく.\displaystyle \int_{0}^{2} (g_1(t)-g_2(t))\,dt を求めよ.

2020.07.20記
y=f(x)=-(x^4-2x^2-1)y=t の交点の x座標の最大のものが g_1(t),最小のものが  g_2(t) だから、

\displaystyle \int_{0}^{2} (g_1(t)-g_2(t))\,dtIとおく) はy=f(x)x座標が最大の枝と最小の枝で挟まれた部分の面積

になる.これを理系として解く場合,最大の解が\sqrt{1+\sqrt{2-t}}で最小の解が-\sqrt{1+\sqrt{2-t}}だから,\displaystyle I=\int_0^2 2\sqrt{1+\sqrt{2-t}}\,dtとなり,この積分を求めるには、2-t=u^2 など適当に置換すれば良い。

ここで,f(x)x座標が最大の枝(1\leqq x\leqq \sqrt{1+\sqrt{2}} )の逆関数x=g(y)=\sqrt{1+\sqrt{2-y}}とすると、 I=2\int_0^2 g(t)\, dtであり,s=g(t)と置換すると f'(s)ds=dtとなるので、
\displaystyle 2\int_0^2 g(t)\, dt=\displaystyle -2\int_{1}^{\sqrt{1+\sqrt{2}}} s f'(s)\, ds=\displaystyle -2 \left[sf(s)\right]_1^{\sqrt{1+\sqrt{2}}} + 2\int_1^{\sqrt{1+\sqrt{2}}} f(s)\, ds\displaystyle  =4+ 2\int_1^{\sqrt{1+\sqrt{2}}} f(s)\, ds
となり,長方形とy=f(x)1\leqq x\leqq \sqrt{1+\sqrt{2}}の部分の面積の合計(の2倍)を求めれば良いことになる.f(x)多項式だから計算は面倒であるが,文系の範囲内で求めることができる.

1. 求める積分\displaystyle\int y dx の形であることを理解し、それが表す面積を図示することができる.

2. \displaystyle\int x dy\displaystyle\int y dxに図形的に読み換えることができる
\displaystyle\int f(y)dy\displaystyle\int f^{-1} (x)dxの関係を図で理解することができる)

という、積分を深く理解していることが要求され,しかもその後の計算に次数下げの工夫が要求されて大変という非常に重い問題は、普通の大学には怖くて出題できないように思う.

ちなみに答は\dfrac{8}{15}\left\{2+(4+\sqrt{2})\sqrt{1+\sqrt{2}}\right\}となる.よほど自信がないと、この答の値だと不安になるだろう.

2020.07.21記
ここで登場する逆関数で置換した後に部分積分を行う方法は、ヤングの不等式や、バームクーヘン積分でも登場する.

2024.01.09記

[解答]
y=-x^4+2x^2+1=-(x^2-1)^2+2=-(x+1)^2(x-1)^2+2 のグラフは次図となり,これと y=t の交点の x 座標のうち
最大のものが g_1(t),最小のものが  g_2(t) であるから,g_1(t)-g_2(t) は次図の太線の長さとなる.

よって \displaystyle \int_{0}^{2} (g_1(t)-g_2(t))\,dt は次図の網目部の面積に等しい.


よって求める値は \alpha=\sqrt{1+\sqrt{2}}\alpha^2=1+\sqrt{2}\alpha^4=3+2\sqrt{2}) とおくと
4+2\displaystyle\int_1^{\alpha}(-x^4+2x^2+1)\,dx
=4+2\left(-\dfrac{\alpha^5}{5}+\dfrac{2\alpha^3}{3}+\alpha-\dfrac{22}{15}\right)
=4+2\cdot\dfrac{-3\alpha^4+10\alpha^2+15}{15}\cdot \alpha-\dfrac{44}{15}
=2\cdot\dfrac{16+4\sqrt{2}}{15}\cdot \alpha+\dfrac{16}{15}
=\dfrac{(32+8\sqrt{2})\sqrt{1+\sqrt{2}}+16}{15}
となる.