[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2021年(令和3年)東北大学理学部数学系AO入試II期-数学[2]

2022.10.14記

[2] 人と人の間隔を2m以上保つようにして,何人かを平らな敷地に配置することを考える.人は大きさを持たない点として扱えるものとする.

(1) 1辺4mの正方形の敷地には9人まで配置することが可能であることと,10人以上を配置することは不可能であることをそれぞれ示せ.

(1) 1辺5mの正方形の敷地には10人を配置することが可能であることを示せ.

本問のテーマ
鳩の巣原理(ディリクレの抽斗論法)

2022.10.14記
(1) 数学パズルとしてはとても有名.
(2) は正三角形に配置をすることは難しく,(1)の結果から対角線に4人配置できることに注意して対角線の上側に頂点を含めて3点配置できるかどうかを考える(すると下側にも3点配置できて合計10点となる).

以下の解答では(2)は発見した順番とは必ずしも一致しない.

[解答]
(1) 敷地の4頂点を (x,y)=(0,0),(4,0),(4,4),(0,4) とするとき,
(0,0),(2,0),(4,0),(0,2),(2,2),(4,2),(0,4),(2,4),(4,4) に9人を配置することができる.

この領域を
0\leqq x\lt \dfrac{4}{3}\dfrac{4}{3}\leqq x\lt \dfrac{8}{3}\dfrac{4}{3}\leqq x\leqq 4

0\leqq y\lt \dfrac{4}{3}\dfrac{4}{3}\leqq y\lt \dfrac{8}{3}\dfrac{8}{3}\leqq y\leqq 4
によって9個の領域に分けると鳩の巣原理により,この領域に10人を配置しようとすると,少なくとも2人が配置される領域が存在するが,この正方形の領域の任意の2点の距離は対角線の \dfrac{4}{3}\sqrt{2}=\dfrac{2\sqrt{8}}{3}\lt 2 以下となるので,間隔が2m未満となり矛盾する.よって10人を配置することは不可能である.

(2) 敷地の4頂点を (x,y)=(0,0),(5,0),(5,5),(0,5) とするとき,
4点 (0,0),(2\sqrt{2},0),(\sqrt{2},\sqrt{2}),(0,2\sqrt{2}) は配置可能である(2点の距離は2,2\sqrt{2},4 のいずれか)
ここで 2+2\sqrt{2}\lt 5 に注意すると,この4点に2点 (5,0),(0,5) を追加した6点も配置可能である.
よってこの状況を (2.5,2.5) について点対称を行なうことにより,この6点に
4点 (5,5),(5-2\sqrt{2},5),(5-\sqrt{2},5-\sqrt{2}),(5,5-2\sqrt{2}) を追加した10点も配置可能である.

つまり,1辺2+2\sqrt{2}mの敷地には10人を配置することが可能となるが,では10人が配置できる最小の正方形の1辺の長さは?となるとこれは難しい問題となる.

例えば 正方形への円の詰込み問題の発見的解法 (pdf) によれば単位正方形に詰め込むことのできる10個の円の最大直径が 0.2964 になるとのこと(文献[5]はもってない)なので,一辺の長さが 6.7476 の正方形に10個の単位円をつめこむことができることとなり,よって10個の円の中心は一辺の長さが4.7476 の正方形に収まる計算になる.ここで2+2\sqrt{2}=4.8284\cdotsであるから,もう少し小さくできるという訳だ.