[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2019年(平成31年)九州大学文系数学[4]

0でない2つの整式f(x),g(x)が以下の恒等式を満たすとする。
f(x^2)=(x^2+2)g(x)+7
g(x^3)=x^4f(x)-3x^2g(x)-6x^2-2

以下の問に答えよ。
(1)f(x)の次数とg(x)の次数はともに2以下であることを示せ。
(2)f(x)g(x)を求めよ。

2019.03.01記

解説:1つ目の条件式からg(x)には奇数次の項がないことを見抜きたい。実際の入試では役に立たないが、未知係数をなるべく最小限に設定して解くというパズルはなかなか面白い。以下の略解ではf(x),g(x)の未知係数を1つも設定していない。単にマニアックなだけで、普段の学習ならば良いが、入試本番ではそんなことをしている暇があったら未知係数を設定して素早く手を動かす方が速い。

略解:f(x^2)=(x^2+2)g(x)+7\cdots(i)
g(x^3)=x^4f(x)-3x^2g(x)-6x^2-2\cdots(ii)において、


f(x)が(0でない)定数とすると、式(i)からg(x)が0となり矛盾するので、f(x)は定数ではない。
また式(i)の左辺には奇数次の項が含まれないので、右辺からg(x)には奇数次の項がない整式、または定数であることがわかる。

f(x)が定数ではないことと式(ii)から、g(x)が定数とすると、左辺は定数で右辺は4次より大きいので矛盾するので、g(x)は定数ではない。
またg(x)には奇数次の項がないことから式(ii)の左辺には奇数次の項が含まれないので、右辺からf(x)には奇数次の項がない整式であることがわかる。

以上から、f(x),g(x)は定数でなく奇数次の項をもたない整式である。


(1) f(x),g(x)の次数をそれぞれ2m,2nとすると、m,n\geq 1である。

式(i)から4m=2+2n、つまり2m=n+1が成立する。
このとき式(ii)でg(x^3)が定める左辺の次数6nよりも、-3x^2g(x)-6x^2-2が定める次数2n+2の方が小さいので、右辺の次数はx^4f(x)の次数2m+4が定め、これが6nと一致する。

よって、3n=m+2となり、2m=n+1,3n=m+2を解いて、m=n=1となり、f(x),g(x)は2次式である。
(より強い条件が証明された)


(2) 式(ii)にx=0を代入してg(0)=-2が成立する。

式(i)の左辺f(x^2)は、f(x)が奇数次の項がない2次式であることより、4次の項と定数項からなる。
これが(x^2+2)g(x)+7に等しいので、g(x)x^2-2の定数倍でなければならず、g(0)=-2よりg(x)=x^2-2
となる。よって式(i)からf(x)=(x+2)(x-2)+7=x^2+3となる。

以上からf(x)=x^2+3,g(x)=x^2-2となることが必要で、これらを式(ii)に代入すると、
x^6-2=x^4(x^2+3)-3x^2(x^2-2)-6x^2-2
恒等式になっているので、十分条件となっている。
(g(x)から式(i)を用いてf(x)を求めているので十分性の確認は済んでいる。
式(ii)はg(0)を求めるためにしか用いていなかったので、恒等式となることを確認しなければならない)

よって求める答はf(x)=x^2+3,g(x)=x^2-2となる。

2021.07.09記
(1) で f(x),g(x)は奇数次の項がない2次式である,と証明した後は (2) で x=0,1 を代入すると
f(0)=2g(0)+7, g(0)=-2f(1)=3g(1)+7, g(1)=f(1)-3g(1)-8
つまり
f(0)=3,g(0)=-2f(1)=4,g(1)=-1
となるので、f(x)=x^2+3,g(x)=x^2-2となることが必要、としてから十分性を確かめてもいいな。