[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2022年(令和4年)大阪大学-数学(文系)[3]

2022.03.05記

[3] 以下の問いに答えよ.

(1) 実数 \alpha,\beta に対し,
\displaystyle\int_{\alpha}^{\beta} (x-\alpha)(x-\beta)dx=\dfrac{(\alpha-\beta)^3}{6}
が成り立つことを示せ.

(2) a,bb\gt a^2 を満たす定数とし,座標平面上に点 {\rm A}(a,b) をとる.さらに,点 \rm A を通り,傾きが k の直線を \ell とし,直線 \ell と放物線 y=x^2 で囲まれた部分の面積を S(k) とする.k が実数全体を動くとき,S(k) の最小値を求めよ.


2022.03.05記
\dfrac{1}{6} 公式を証明させるのだから,\dfrac{1}{6} 公式を使ってはいけない.

(2) は超有名問題で,\ell の傾きが x=a における接線の傾き 2a に等しいときに S(k) が最小となる.その最小値は \dfrac{4}{3}(b-a^2)^{3/2} となることが知られている(カヴァリエリの原理を使うと良い).

[解答]

(1) \displaystyle\int_{\alpha}^{\beta} (x-\alpha)(x-\beta)dx=\displaystyle\int_{\alpha}^{\beta} \{(x-\beta)-(\alpha-\beta)\}(x-\beta)dx=\Bigl[\dfrac{(x-\beta)^3}{3}-(\alpha-\beta)\cdot\dfrac{(x-\beta)^2}{2}\Bigr]_{\alpha}^{\beta}=-\dfrac{(\alpha-\beta)^3}{3}-(\alpha-\beta)\cdot\dfrac{(\alpha-\beta)^2}{2}=\dfrac{(\alpha-\beta)^3}{6}
である.
(2) \ell:y=k(x-a)+by=x^2 の交点は,
x^2-k(x-a)-b=x^2-kx+ka-b=0 の2解で,この2次方程式の判別式は k^2-4(ka-b)=(k-2a)^2+4(b-a^2) となり,b\gt a^2 から正の値となるので,\elly=x^2 は任意の実数 k に対して必ず相異なる2点で交わる.

この2交点の x 座標を \alpha\beta\alpha\lt\beta)とすると,解と係数の関係より
\alpha+\beta=k\alpha\beta=ka-b
であり,
S(k)=\displaystyle\int_{\alpha}^{\beta} \{(k(x-a)+b-x^2\}dx=-\displaystyle\int_{\alpha}^{\beta} (x-\alpha)(x-\beta)dx=-\dfrac{(\alpha-\beta)^3}{6}=\dfrac{(\beta-\alpha)^3}{6}
が成立する(\beta-\alpha\gt 0 より \beta-\alpha に書き換えた).

ここで
(\beta-\alpha)^2=(\alpha+\beta)-4\alpha\beta=k^2-4(ka-b)=(k-2a)^2+4(b-a^2)
の実数 k における最小値は,k=2a のときの 4(b-a^2) であるから,
S(k)\geqq \dfrac{\{4(b-a^2)\}^{3/2}}{6}=\dfrac{4(b-a^2)^{3/2}}{3}
となり,S(k) の最小値は \dfrac{4(b-a^2)^{3/2}}{3} である.