[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2023年(令和5年)慶應義塾大学理工学部-数学[3]

2023.12.16記

[3] 何も入っていない2つの袋A,Bがある.いま,「硬貨を1枚投げて表が出たら袋A,裏が出たら袋Bを選び,以下のルールに従って選んだ袋の中に玉を入れる」という操作を繰り返す.

ルール

・選んだ袋の中に入っている玉の数がもう一方の袋の中に入っている玉の数より多いか,2つの袋の中に入っている玉の数が同じとき,選んだ袋の中に玉を1個入れる.

・選んだ袋の中に入っている玉の数がもう一方の袋の中に入っている玉の数より少ないとき,選んだ袋の中に入っている玉の数が,もう一方の袋の中に入っている玉の数と同じになるまで選んだ袋の中に玉を入れる.

たとえば,上の操作を3回行ったとき,硬貨が順に表,表,裏と出たとすると,A,B 2つの袋の中の玉の数は次のように変化する.

\begin{matrix} \mbox{A:0個} \\ \mbox{B:0個}\end{matrix}\rightarrow\begin{matrix} \mbox{A:1個} \\ \mbox{B:0個}\end{matrix}\rightarrow\begin{matrix} \mbox{A:2個} \\ \mbox{B:0個}\end{matrix}\rightarrow\begin{matrix} \mbox{A:2個} \\ \mbox{B:2個}\end{matrix}

(1) 4回目の操作を終えたとき,袋Aの中に3個以上の玉が入っている確率は[カ]である.また,4回目の操作を終えた時点で袋Aの中に3個以上の玉が入っているという条件の下で,7回目の操作を終えたとき袋Bの中に入っている玉の数が3個以下である条件付き確率は[キ]である.

(2) n 回目の操作を終えたとき,袋Aの中に入っている玉の数のほうが,袋Bの中に入っている玉の数より多い確率を p_n とする. p_{n+1}p_n を用いて表すと[ク]となり,これより p_nn を用いて表すと[ケ]となる.

(3) n 回目( n\geqq 4 )の操作を終えたとき,袋Aの中に n-1 個以上の玉が入っている確率は[コ]であり,n-2 個以上の玉が入っている確率は[サ]である.

2023.12.16記
操作前以外では,表の次に裏,または裏の次に表が出たときのみ玉の数が同数となることに注意しよう.

[解答]
(1) 袋Aの中に4個の玉があるのは1通りである.
袋Aの中に3個の玉があるのは1回だけ同数となり,同数となった後は表しか出ない場合である.同数となるのが2回目〜4回目の操作のうちの1回でそれぞれ表から裏,裏から表の2通りあるから 3\times 2=6 通りである.

よって [カ]は \dfrac{1+6}{2^4}=\dfrac{7}{16}

玉の数を (A,B) のように表す.4回目の操作を終えた時点で袋Aの中に3個以上の玉が入っているとき,7回目の操作を終えたときの場合の数は 7\times 8=56 通りである。4回目の操作を終えた時点で袋Aの中に3個以上の玉が入っている7通りについて
(4,0)の場合「表表表」,
(3,1)の場合(2通り)「表表表」,「裏表表」,
(3,2)の場合(2通り)「表表表」,「裏表表」,
(3,3)の場合(2通り)「表表表」
の合計11通りが7回目の操作を終えたときに袋Bが3個以下となる場合である.よって [キ]は \dfrac{11}{56}

(2) n 回目の操作を終えたとき,袋Bの中に入っている玉の数のほうが,袋Aの中に入っている玉の数より多い確率も p_n となる. n 回目の操作を終えたとき,同数になる確率を q_n とおくと 2p_n+q_n=1 であり,p_{n+1}=\dfrac{p_n+q_n}{2} であるから,[ク]は
p_{n+1}=-\dfrac{p_n}{2}+\dfrac{1}{2}
となる.p_1=\dfrac{1}{2}より[ケ]は
p_n=\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{6}\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}
となる.

(3) 袋Aの中に n 個の玉があるのは1通りである.

袋Aの中に n-1 個の玉があるのは1回だけ同数となり,同数となった後は表しか出ない場合である.同数となるのが2回目〜n回目の操作のうちの1回でそれぞれ表から裏,裏から表の2通りあるから (n-1)\times 2=2n-2 通りである.

袋Aの中に n-2 個の玉があるのは
(a) 1回だけ同数となる場合:
n-1 回目で (n-2,n-2) となり最後裏で終る場合であり,n-1 回目が表か裏かの2通りである.

(b) 2回だけ同数となる場合:
2回目に同数となった後は表しか出ない場合である.同数となるのが2回目〜n回目の操作のうちの連続しない2回でそれぞれ表から裏,裏から表の2通ずつあるから {}_{n-2}\mbox{C}_2(n-1)\times 2^2=2(n-2)(n-3)=2n^2-10n+12 通りである.

よって[コ]は \dfrac{1+(2n-2)}{2^n}=\dfrac{2n-1}{2^n}
であり[サ]は \dfrac{1+(2n-2)+2+(2n^2-10n+12)}{2^n}=\dfrac{2n^2-8n+13}{2^n}

まぁ、どこかで間違えるよね.普通は.