[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2022年(令和4年)東京大学-数学(理科)[6]

2022.02.26記

[6] \rm O を原点とする座標平面上で考える。0 以上の整数 k に対して,ベクトル \vec{v_k}
\vec{v_k}=\left(\cos\dfrac{2k\pi}{3},\sin\dfrac{2k\pi}{3}\right)
と定める。投げたとき表と裏がどちらも \dfrac{1}{2} の確率で出るコインを N 回投げて,座標平面上に点  {\rm X}_{0} {\rm X}_{1} {\rm X}_{2},……, {\rm X}_{N} を以下の規則 (i),(ii) に従って定める。

(i)  {\rm X}_{0} {\rm O} にある。

(ii) n1 以上 N 以下の整数とする。  {\rm X}_{n-1} が定まったとし,  {\rm X}_{n} を次のように定める。

n 回目のコイン投げで表が出た場合,
\vec{{\rm OX}_n}=\vec{{\rm OX}_{n-1}}+\vec{v_k}
により  {\rm X}_n を定める。 ただし,k は1回目から n 回目までのコイン投げで裏が出た回数とする。

n 回目のコイン投げで裏が出た場合, {\rm X}_n {\rm X}_{n-1} と定める。

(1) N = 8 とする。{\rm X}_8\rm O にある確率を求めよ。

(2) N = 200 とする。{\rm X}_{200}\rm O にあり,かつ,合計200回のコイン投げで表がちょうど r 回出る確率を p_r とおく。ただし 0\leqq r\leqq 200 である。p_r を求めよ。また p_r が最大となる r の値を求めよ。


2022.02.26記

(1) 表が0回のときは1通り

表が6回のときは,「表表裏表表裏表表」の1通り

表が3回のときは,
「表裏表裏表」と裏3つの並べ換えで4通り,
「表裏裏表裏裏表」と裏1つの並べ換えで2通り,
「表裏裏裏裏表裏表」の1通り
「表裏表裏裏裏裏表」の1通り
の合計8通り

以上を合計して10通りだから,\dfrac{10}{256}=\dfrac{5}{128}

のように真面目に計算したら(2)はうまくいかないので、何かうまい方法があるはず。だけど、時間内には思いつかなかった。とほほ。

ちょっと方針が思いつかないので、一旦寝てから考える。

とりあえず,表3回の場合をもう少し考えてみよう。

「表裏表裏表」に裏3つを加えるときに、上のように 4+2+1+1 で計算したが,これをもう少し規則的に考えられないだろうか?

「[表裏][表裏][表]
[表裏][表裏][表]」
[表裏][表裏][表]裏裏
裏裏[表裏][表裏][表]
裏裏裏[表裏][表裏][表]」
「[表裏]裏裏裏[表裏][表]」
「[表裏][表裏]裏裏裏[表]」
「[表裏][表裏][表]裏裏裏

あっ、そうか。この考え方は良くない。簡単に解けるのだったら、もう少し単純に考えるべきで、
裏5つのどこに表を挿入するかで考えれば良い。それまでに裏が何回でているかを書くと

「0裏裏2裏裏4裏]
「裏1裏裏3裏裏5]
「裏1裏2裏3裏裏]
「裏裏2裏3裏4裏]
「裏裏裏3裏4裏5]
「0裏裏裏裏4裏5]
「0裏1裏裏裏5裏]
「0裏1裏2裏裏裏]

のようになって、表が出たときに裏が何回でていたかの累計が正の3の倍数になっている。しかも、3で割った余りは \{0,1,2\} が1つずつだ。なるほど。


[解答]

\vec{v_0} 向きに進むのは裏が 3 で割りきれる数だけ出た次に表,
\vec{v_1} 向きに進むのは裏が 3 で割った余りが1の数だけ出た次に表,
\vec{v_2} 向きに進むのは裏が 3 で割った余りが2の数だけ出た次に表

が出たときである.

また、{\rm X}_N={\rm O} となるのは \vec{v_0} 向きに進んだ数と、\vec{v_1} 向きに進んだ数と、\vec{v_2} 向きに進んだ数の全てが等しいときである.よって表が 3 の倍数回出るときである。

以上から,{\rm X}_N={\rm O} となるのは表が 3 の倍数回出るときであり,それを 3r 回とすると 0 から N-3r までの数で 3 で割り切れる数、余りが1の数、余りが2の数が重複を許して丁度 r 個ずつ選ばれるときである.

(1) 表が0回のとき:1通り

表が3回のとき:0から5までの6個の数で 3 で割り切れる数、余りが1の数、余りが2の数は 2 個ずつあるので
2^3=8 通り

表が3回のとき:0から2までの3個の数で 3 で割り切れる数、余りが1の数、余りが2の数は 1 個ずつあるので
1^3 通り

以上を合計して10通りだから,\dfrac{10}{256}=\dfrac{5}{128} となる.

(2)(a) r\equiv 1,2(\mbox{mod}\,3) のときは p_r=0

(b) r\equiv 0(\mbox{mod}\,3) のとき:
r=3q とおくと,0から 200-3q までの 201-q 個の数で 3 で割り切れる数、余りが1の数、余りが2の数は 67-q 個ずつあるので,重複組合せから ({}_{67-q}\mbox{H}_q)^3=({}_{66}\mbox{C}_q)^3 通りとなる.

よって p_r=\dfrac{\left({}_{66}\mbox{C}_{\frac{r}{3}}\right)^3}{2^{200}}

パスカルの三角形からわかるように,{}_{66}\mbox{C}_{q} が最大となるのは真ん中の数だから q=33,つまり r=99 のときである.

物を数えるのは難しい。

2022.03.10記
2013年(平成25年)東京大学前期-数学(理科)[3] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
と同じ考え方をしているので,過去問をしっかりやっていれば簡単な問題だった。