1890年(明治23年)東京農林學校別科-算數學 - [別館]球面倶楽部零八式markIISR

2020.11.08記
募集時は東京農林學校別科だと思われるが，5月に東京農林學校乙科となり，6月に帝國大學農科大學乙科となった．
明治23年11月発行の問題集では「農科大學別科」と書いてあった．

[1] 或人三十里ヲ隔ツル所ニ急用アリテ停車所ニ到リ發車ヲ待テハ二時ヲ徒費ス茲ニ直ニ發スル馬車アリ一時間ニ四里ヲ走ルト云ヒ而 f:id:spherical_harmonics:20201107234617p:plain:w18 滊車ハ六里ヲ走ルト云フ此際何レニセンカ到着ノ遅速ヲ算定スヘシ

[2] 牧牛アリ其總數ノ七分ノ五ト九分ノ四トノ差ハ十七頭ナリト云フ總數幾頭ナルヤ
（注:原典では「十七頭」が「十五頭」だったが，それだと解が自然数にならないので修正した）

[3] 價三錢ノ差アル上下兩種ノ藥種總目方百斤ヲ買ヒ總代金十三圓九十二錢ヲ掃ヒ上種ノ價一斤十五錢ナリト云フ問フ各種ノ斤數如何

[4] 壹畝歩十錢ノ原野ヲ五百二十二圓ヲ以テ長方形ニ買ヒ取ント欲ス幅十二間トスレハ長サ如何

[5] 二丈二尺八寸ノ直立ノ樹ガ一丈七尺一寸ノ影ヲ地面ニ映スルトキハ影端ヨリ樹梢ニ至ル距離如何

当時の解答．以下の文中において

$a:b=c:d$ を $a:b::c:d$ と書いていた

原典の「勾股肱」は「勾股弦」の誤植と判断したが，「勾股肱」で正しいかも知れない．ちなみに「勾股弦の法」とはピタゴラスの定理のこと．

[1] 馬車ハ直ニ發スルモ一時間四里ナルガ故ニ $\dfrac{30}{4}$ 乃チ七時三十分ニシテ到ル然ルニ滊車ハ $\dfrac{30}{6}$ 即チ五時間ニシテ到達スルト雖モ發車前二時間ヲ俟タサル可ラス故ニ其合計七時間ヲ要スルナリ然レ𪜈之ヲ馬車ノ七時版ニ比ブレバ猶ホ三十分ノ差アルガ故ニ滊車ニ乗ル方三十分早キナリ

答．氣車ノ早キヿ三十分

[2] 總數ノ七分ノ五ト九分ノ四トノ差ハ十五頭ナルガ故ニ
$\dfrac{5}{7}-\dfrac{4}{9}=\dfrac{17}{63}$
$\dfrac{17}{63}:1::17:x$
$x=63$

答．六十三頭

[3] 上種十五錢ナレバ下種十二錢ナルヿハ題意ニヨツテ明カナリ而シテ此平均價格ハ百分ノ十三圓九十貮錢即チ十三錢九厘二毛ナリ因ツテ貴賤比例ヲ設ケ

	15	1.92
13.92
	12	1.08

上下両種ノ割合 $\dfrac{108}{192}$ ナルヿヲ知リ更ニ按分スル時ハ
$108+192:108=100:36$
$108+192:192=100:64$
即チ上種三十六斤ニシテ下種ハ六十四斤タルヿヲ知ル可シ

[4] 一畝歩ノ價十錢トスレバ五百二十二圓ニテハ五錢二百二十畝ノ地ヲ買ヒ得可シ而シテ之レヲ坪トナス f:id:spherical_harmonics:20190309182705p:plain:w20 ハ一畝ハ三十歩ナルガ故ニ十五万六千六百坪トナルナリ乃チ之ヲ幅十二間ニテ除スル時ハ其長サヲ得可ク其得タル間數一万三千〇五十間ヲ里町ニ改ムレバ六里一丁三十間トナルナリ

答．六里一丁三十間

[5] 樹ハ地上ニ直立シテ殆ンド直角ヲナスガ故ニ其樹ト影ト影端ヨリ樹梢ニ至ル距離トハ直三角形ヲナス可シ故ニ勾股弦ノ法ニ依リ之ヲ求ムルヿ次ノ如シ
$\sqrt{228^2+171^2}=285$

答．二丈八尺五寸