[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1974年(昭和49年)東京大学-数学(理科)[4]

2023.08.09記

[4] 二つの関数 f(x)g(x) が次の性質 (1),(2),(3),(4) を持つものとする.

(1) f(x)g(x)x=0 において微分可能.

(2) f(0)=g(0)=0

(3) 原点において,y=f(x) および y=g(x) のグラフに引いた接線はたがいに直交する.

(4) 実数 abc を適当に取ると,
f'(0)=\displaystyle\lim_{x \to 0}\dfrac{ax+bf(x)}{cx+f(x)}
g'(0)=\displaystyle\lim_{x \to 0}\dfrac{ax+bg(x)}{cx+g(x)}が成りたつ.

このとき,a の値を求めよ.

2020.09.20記
線型変換の視点から眺めてみよう.

[大人の解答]
\vec{f}(x)=(x,f(x))^{\top}\vec{g}(x)=(x,g(x))^{\top} とすると2つの曲線は原点を通り原点で微分可能であり,原点における接線が直交するので f'(0)g'(0)=-1 となる.
A=\begin{pmatrix} a& b\\c& 1\end{pmatrix}K=\begin{pmatrix} b& a\\ 1& c\end{pmatrix}\vec{f'}=(f'(0),1)^{\top}\vec{g'}=(g'(0),1)^{\top} とおくと,

\displaystyle \lim_{x\to 0} A\vec{f}(x) \parallel K\vec{f'} (正確には\displaystyle \lim_{x\to 0} A\dfrac{\vec{f}(x)}{|\vec{f}(x)|} = K\dfrac{ \vec{f'} }{ |\vec{f'}|} )が成立するので,\vec{f'} \parallel K\vec{f'} が成立するようにa\sim cを選んでいる.よって,\vec{f'} K固有ベクトルである.

同様に \vec{g'}K固有ベクトルである.f'(0)g'(0)=-1 より \vec{f'},\vec{g'} は直交する.
よって K の2つの固有ベクトルが互いに直交するので,K は対称行列となり,a=1 となる.

K の2つの固有ベクトルが互いに直交するので,P=(\vec{f'},\vec{g'}) は直交行列となり,K は直交行列を用いて対角化することができる.よってK=P\begin{pmatrix} \lambda_1 & 0 \\ 0 & \lambda_2 \end{pmatrix}P^{\top} は対称行列となる,ということ.

2023.08.11記

[解答]
f'(0)=Fg'(0)=G とおくと,(1),(2),(4)により
F=\displaystyle\lim_{x \to 0}\dfrac{a+bf(x)/x}{c+f(x)/x}=\dfrac{a+bF}{c+F}
G=\displaystyle\lim_{x \to 0}\dfrac{a+bg(x)/x}{c+g(x)/x}=\dfrac{a+bG}{c+G}
となる.ここで c+F=0 と仮定すると a+bF=0 が必要だからa=bc となり,また c+G=0 と仮定すると a+bG=0 が必要だからやはり a=bc となるが,a=bc のとき,
F=\displaystyle\lim_{x \to 0}\dfrac{a+bf(x)/x}{c+f(x)/x}=b
G=\displaystyle\lim_{x \to 0}\dfrac{a+bg(x)/x}{c+g(x)/x}=b
つまり f'(0)g'(0)=b^2 となり,(3) の f'(0)g'(0)=-1 に矛盾する.

よってc+F\neq 0c+G\neq 0であり,
F^2-(c-b)F-a=0G^2-(c-b)G-a=0
が成立する.(3) より FG=-1F,G は実数だから F\neq G となるので,
F,G\lambda2次方程式
\lambda^2-(c-b)\lambda-a=0
の2解となる.よって解と係数の関係から -a=LM=-1となりa=1となる.