[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1979年(昭和54年)東京大学-数学(理科)[5]

2023.08.19記

[5] t を正の数とし,次の条件(A),(B) によって定まるx の3次式を f(x) とする.

(A) 曲線 y=f(x)…(1) は直線 y=x…(2) の上の 2\mbox{P}(-t,-t)\mbox{O}(0,0) を通る.

(B) f'(0)=0f''(0)=2

さて,曲線(1)と直線(2)との交点のうちで,x 座標が最大のものを \mbox{Q} とし,曲線(1)の点 \mbox{O} から点 \mbox{Q} までの部分と,線分 \mbox{OQ} とで囲まれた領域の面積を S(t) とする.このとき,\displaystyle\lim_{t\to\infty}S(t) を求めよ.

本問のテーマ

2023.08.19記

[大人の解答]
(A),(B)から f(0)=0f'(0)=0f''(0)=2f(-t)=-t となるので,
f(x)=Ax^3+\dfrac{f''(0)}{2}x^2+f'(0)x+f(0)=Ax^3+x^2
と書け,f(-t)=-t から
f(x)=\dfrac{t+1}{t^2}x^3+x^2
となる.y=f(x)y=x の交点の x 座標は
\dfrac{t+1}{t^2}x^3+x^2-x=0,つまり
(t+1)x^3+t^2x^2-t^2x=0
の解であるから,0,-t 以外に -\dfrac{t^2}{t+1}-(-t)-0=\dfrac{1}{t+1}sとおく) という正の解をもち,これらは 0,-t とは異なるので \mbox{Q}x 座標である.

よって
S(t)=\displaystyle\int_0^s (x-f(x))dx
=\displaystyle\int_0^s (x-x^2)dx-\dfrac{t+1}{t^2}\displaystyle\int_0^s x^3dx
となる.t\to\inftys\to 1 だから
\displaystyle\lim_{t\to\infty}S(t)=\displaystyle\int_0^1 (x-x^2)dx-0\cdot \displaystyle\int_0^1 x^3dx
=\displaystyle\int_0^1 (x-x^2)dx=\dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{3}=\dfrac{1}{6}

普通に f(x)=Ax^3+Bx^2+Cx+D とおいても f(0)=D=0f’(0)=C=0f''(0)=2B=2 から直ちに
f(x)=Ax^3+x^2 が導けるので,マクローリン展開を知っていると有利かというと,それほどのものではない.

もちろん,答の予測がつくことは制限時間のある入試では有利であるけれど.