[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1987年(昭和62年)東京大学-数学(文科)[1]

2023.08.29記

[1] 行列 X=\begin{pmatrix} x & z \\ z & y \end{pmatrix} が条件
X^2-4X+\begin{pmatrix} 3 & 0 \\ 0 & 3 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix}
をみたすとき,このような xy を座標とする点 (x,y) が存在する範囲を図示せよ.ただし,行列の成分は実数とする.

2020.09.28記

[解答]
X単位行列の定数倍のとき,X=I,3I単位行列Iとする)となる.
そうでないとき,ケーリー・ハミルトンの定理から x+y=4,xy-z^2=3 が成立する.

このような zが存在するような x,y を考えると
x(4-x)\geqq 3 から 1\leqq x\leqq 3となるので,

(x,y)=(1,1),(3,3) 及び x+y=41\leqq x\leqq 3)を図示すれば良い.

なお,Y=X-2I とおくと,Y^2=I が成立する.つまり単位行列平方根を求める問題となる.

[大人の解答]
Y=X-2I とおくと,Y^2=I が成立するので,Y の Jordan 標準形は,固有値が増加するように並べると
\begin{pmatrix} -1 & 0 \\ 0 & -1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} -1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} の3つに限られる.

このとき,Y\pm I 及び \mbox{tr} \, Y=0,\mbox{det}\, Y=-1 をみたす行列に限られる.

つまり,X=I,3I または,
(x-2)+(y-2)=0(x-2)(y-2)-z^2=-1 つまり  x+y=4,xy=3+z^2 をみたす.zが実数であるから,
(x,y)=(1,1),(3,3) 及び x+y=4xy\geqq 3
となる