[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1999年(平成11年)東京大学後期-数学

2024.02.11記

[1] (1) n を正の整数とする.-\dfrac{\pi}{2}\leqq x\leqq\dfrac{\pi}{2} の範囲において
f_n(x)=
\left\{\begin{array}{ll}
\dfrac{\sin nx}{\sin x} & -\dfrac{\pi}{2}\leqq x\leqq  \dfrac{\pi}{2}\mbox{,}\, x \neq0 \\ 
c_n & x=0 \end{array}\right.
とおくことにより定義される関数 f_n(x) が,連続関数となるように定数 c_n の値を定めよ.

(2) f_3(x)\cos x\cos 2x 等を用いて表せることを示し,定積分 \displaystyle\int_{-\frac{\pi}{2}}^{\frac{\pi}{2}} f_3(x)\,dx の値を求めよ.

(3) 任意の正の整数 n に対して,定積分 \displaystyle\int_{-\frac{\pi}{2}}^{\frac{\pi}{2}} f_{2n+1}(x)\,dx の値を求めよ.

[2] 座標平面上の原点を \mbox{O}(0,0) とする.また x 座標および y 座標がともに整数であるような点を格子点という.

(1) t を正の実数とする.点 \mbox{P}(-1,0) を通り,傾きが t の直線と単位円 x^2+y^2=1 との \mbox{P} 以外の交点を \mbox{Q}(t) とする.\mbox{Q}(t) の座標を求めよ.つぎに,0\lt s\lt t をみたす2つの実数 st に対し,線分 \mbox{Q}(s)\mbox{Q}(t) の長さを求めよ.

(2) \angle\mbox{Q}(s)\mbox{PO}=\alpha\angle\mbox{Q}(t)\mbox{PO}=\betaとし,u=\tan\dfrac{\alpha}{2}v=\tan\dfrac{\beta}{2} とおく.もし uv がともに有理数ならば,線分 \mbox{Q}(s)\mbox{Q}(t) の長さもまた有理数となることを示せ.

(3) 任意に与えられた 3 以上の整数 n に対し,つぎの条件(\mbox{C}1),(\mbox{C}2),(\mbox{C}3)をすべて満たす n 個の異なる点 \mbox{A}_1\mbox{A}_2,…,\mbox{A}_n が,座標平面上に存在することを証明せよ.

\mbox{C}1\mbox{A}_1\mbox{A}_2,…,\mbox{A}_n はすべて格子点である.

\mbox{C}2\mbox{A}_1\mbox{A}_2,…,\mbox{A}_n のどの異なる3点も一直線上にない.

\mbox{C}3\mbox{A}_1\mbox{A}_2,…,\mbox{A}_n のどの異なる 2\mbox{A}_i\mbox{A}_j に対しても,線分 \mbox{A}_i\mbox{A}_j の長さは整数である.

[3] 座標平面上にある2つの四角形 \mbox{ABCD}\mbox{A}'\mbox{B}'\mbox{C}'\mbox{D}' が相似であるとは,対応する 4 つの頂点における内角がそれぞれ等しく,かつ対応する辺の長さの比がすべて等しいこととする.このとき

\mbox{ABCD}\mbox{A}'\mbox{B}'\mbox{C}'\mbox{D}'

と書く.ただし,四角形 \mbox{ABCD} と書くときには,4つの頂点 \mbox{A}\mbox{B}\mbox{C}\mbox{D} は図のようにつねに時計と反対回りに並んでいるものとし,また四角形は周および内部を込めて考えるものとする.

四角形 \mbox{A}_0\mbox{B}_0\mbox{C}_0\mbox{D}_0 が与えられたとき,この四角形から出発して,任意の整数 nに対して四角形 \mbox{A}_n\mbox{B}_n\mbox{C}_n\mbox{D}_n を以下のように帰納的に定める.

(I) n=0 のときは,与えられた四角形 \mbox{A}_0\mbox{B}_0\mbox{C}_0\mbox{D}_0 とする.

(II) n\gt 0 のときは,四角形 \mbox{A}_{n-1}\mbox{B}_{n-1}\mbox{C}_{n-1}\mbox{D}_{n-1} まで定まったとして,四角形 \mbox{A}_n\mbox{B}_n\mbox{C}_n\mbox{D}_n

\mbox{A}_n=\mbox{D}_{n-1}, \quad \mbox{B}_n=\mbox{C}_{n-1} かつ
\mbox{A}_n\mbox{B}_n\mbox{C}_n\mbox{D}_n\mbox{A}_{n-1}\mbox{B}_{n-1}\mbox{C}_{n-1}\mbox{D}_{n-1}

となる四角形として定める.

(III) n\lt 0 のときは,0-1,… と負の向きに進んで,四角形 \mbox{A}_{n+1}\mbox{B}_{n+1}\mbox{C}_{n+1}\mbox{D}_{n+1} まで定まったとして,四角形 \mbox{A}_n\mbox{B}_n\mbox{C}_n\mbox{D}_n

\mbox{D}_n=\mbox{A}_{n+1}, \quad \mbox{C}_n=\mbox{B}_{n+1} かつ
\mbox{A}_n\mbox{B}_n\mbox{C}_n\mbox{D}_n\mbox{A}_{n+1}\mbox{B}_{n+1}\mbox{C}_{n+1}\mbox{D}_{n+1}

となる四角形として定める.

こうして定まった四角形 \mbox{A}_n\mbox{B}_n\mbox{C}_n\mbox{D}_nK_n と書くことにする.

さて,座標平面上の3点 \mbox{A}_0(2,1)\mbox{B}_0(8,4)\mbox{P}(4,12) を考える.原点を \mbox{O} とし,線分 \mbox{O}\mbox{P} 上に原点以外の 1\mbox{C}_0 をとる.点 \mbox{A}_0 から線分 \mbox{B}_0\mbox{C}_0 に平行にひいた直線と,線分 \mbox{O}\mbox{P} との交点を \mbox{D}_0 とする.このようにして定まる四角形 \mbox{A}_0\mbox{B}_0\mbox{C}_0\mbox{D}_0 から出発して,上記のようにして得られる四角形の系列

…,K_{-2}K_{-1}K_0K_1K_2,…

について考える.

(1) \angle\mbox{B}_0\mbox{OP} を求めよ.

(2) 線分 \mbox{OP} 上のある点 \mbox{C}_0 をえらび,それにより定まる四角形 \mbox{A}_0\mbox{B}_0\mbox{C}_0\mbox{D}_0 から出発して,四角形の系列

…,K_{-2}K_{-1}K_0K_1K_2,…

を作ったところ,ある 0 でない整数nが存在して,K_n=K_0 となったという.このとき,点 \mbox{C}_0 の座標を求めよ.また,K_n=K_0 となる整数 n の値をすべて求めよ.

(3) 線分 \mbox{O}\mbox{P} 上のある点 \mbox{C}_0 をえらび,それにより定まる四角形 \mbox{A}_0\mbox{B}_0\mbox{C}_0\mbox{D}_0 から出発して,四角形の系列

…,K_{-2}K_{-1}K_0K_1K_2,…

を作ったところ,これら四角形が座標平面から原点を除いた部分を,辺と頂点以外には互いに重なることなく,すき間なくおおったという.このような性質をもつ点 \mbox{C}_0 をすべて求め,それらの座標を記せ.またそれらの場合のおのおのについて,点 (100,50)K_n に含まれるような整数 n の値をすべて求めよ.

1999年(平成11年)東京大学後期-数学[1] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
1999年(平成11年)東京大学後期-数学[2] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
1999年(平成11年)東京大学後期-数学[3] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR