[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2007年(平成19年)東京大学後期-総合科目II

[1] 大型風車を建設するとき,前もって風速の計測を行って風車の出力を予測し,経済性などを検討する.以下の設問に答えながら,風車の出力を予測せよ.

図1-1(略)

A
図1-1に示すように,地面からの高さが大きくなるにしたがい風速は大きくなる.平地においては,高さ h の風速 V(h) は,高さ h_r に設けられた風速計の値 V(h_r) を用い,次のように示される.
V(h)=V(h_r)\Bigl(\dfrac{h}{h_r}\Bigr)^{\frac{1}{7}}……①

(1) 高さ 8.0\mbox{m} に設置した風速計5.1\mbox{m/s} を示したとき,大型風車の中心高さ 80\mbox{m} における風速を,常用対数表を参照し,有効数字2桁で求めよ.

表:常用対数表

x \log_{10}x   x \log_{10}x   x \log_{10}x   x \log_{10}x   x \log_{10}x
1.0 .0000 3.0 .4771 5.0 .6990 7.0 .8451 9.0 .9542
1.1 .0414 3.1 .4914 5.1 .7076 7.1 .8513 9.1 .9590
1.2 .0792 3.2 .5051 5.2 .7160 7.2 .8573 9.2 .9638
1.3 .1139 3.3 .5185 5.3 .7243 7.3 .8633 9.3 .9685
1.4 .1461 3.4 .5315 5.4 .7324 7.4 .8692 9.4 .9731
1.5 .1761 3.5 .5441 5.5 .7404 7.5 .8751 9.5 .9777
1.6 .2041 3.6 .5563 5.6 .7482 7.6 .8808 9.6 .9823
1.7 .2304 3.7 .5682 5.7 .7559 7.7 .8865 9.7 .9868
1.8 .2553 3.8 .5798 5.8 .7634 7.8 .8921 9.8 .9912
1.9 .2788 3.9 .5911 5.9 .7709 7.9 .8976 9.9 .9956
2.0 .3010 4.0 .6021 6.0 .7782 8.0 .9031  
2.1 .3222 4.1 .6128 6.1 .7853 8.1 .9085  
2.2 .3424 4.2 .6232 6.2 .7924 8.2 .9138  
2.3 .3617 4.3 .6335 6.3 .7993 8.3 .9191  
2.4 .3802 4.4 .6435 6.4 .8062 8.4 .9243  
2.5 .3979 4.5 .6532 6.5 .8129 8.5 .9294  
2.6 .4150 4.6 .6628 6.6 .8195 8.6 .9345  
2.7 .4314 4.7 .6721 6.7 .8261 8.7 .9395  
2.8 .4472 4.8 .6812 6.8 .8325 8.8 .9445  
2.9 .4624 4.9 .6902 6.9 .8388 8.9 .9494  

B
風速を数値計算で求めるために,10^{\frac{1}{7}} の近似値を次の方法で求めることにする.
f(x)=x^7-10……②
として,方程式 f(x)=0 の実数解 \alpha を求める方法を考える.まず,図1-2に概形を示すように,初めに x=x_1 をとり,点 (x_1,f(x_1)) における関数 y=f(x) の接線を引く.その接線と x 軸との交点の x 座標を x_2 とする.このプロセスを繰り返すと交点は \alpha に近づいていく.このような逐次解法をニュートン法と呼ぶ.このようにして求めた交点の x 座標からなっる数列を \{x_n\}(n=1,2,\ldots) とする.以下では x_1=1.5 とする.

図1-2

(2) x\gt 0 の範囲で f''(x) が常に正であることを示せ.また,x_1\gt\alpha であることを示せ.

(3) x_{n+1}x_n を用いて表せ.

(4) ニュートン法で②式の解を求める場合に,解の近似値 x_n の誤差を \varepsilon_n=x_n-\alpha と定義する.このとき,ある正の数 M を用いて
|\varepsilon_{n+1}|\lt M|\varepsilon_n|^2……③
の関係が満されることを示せ.ここで(3)で与えられた x_nx_{n+1} の関係を x_{n+1}=g(x_n) と表すことにする.このとき,g(x) は,\alpha\lt x のとき,\alpha\lt b\lt x の範囲にある b によって
g(x)=g(\alpha)+g'(\alpha)(x-\alpha)+\dfrac{1}{2}g''(b)(x-\alpha)^2……④
と表されることを用いてもよい.

(5) x_2 を有効数字2桁で求めよ.

C
大型風車の羽根車の半径を r,羽根車の面積を A=\pi r^2 とし,風車がないときの中心高さでの風速を V_1,空気の密度を \rho とする.このとき,風車の出力 P を以下の手順で求めよ.なお,以下の小問では羽根車の範囲で高さ方向の風速の変化は無視できるものとする.また,空気の密度は変化しないものとする.

(6) 風速が V のとき,空気の単位質量あたりの運動エネルギーは \dfrac{1}{2}V^2 で与えられる.風車の羽根車の面積 A に,時間 T の間に風速 V_1流入する空気の質量 Q_T(V_1),および運動エネルギー E_T(V_1) を求めよ.

実際の風車の運転では,図1-3に示すように,入り口に流入する空気が減速されて流れが広がる.そのために,(6)で求めた空気の全てのエネルギーを風車の出力として得ることができない.流体力学によると,風車が得るエネルギーは入り口に流入する空気と出口で流出する空気の運動エネルギーの差で与えられる.入り口での風速を V_1,出口での風速を V_2 とする.このとき,風車の位置での風速は V_p=\dfrac{1}{2}(V_1+V_2) となることが知られている.

(7) \dfrac{V_p}{V_1}=1-a と表すとき,風車の出力 PV_1Aa\rho を用いて表せ.

なお,a は風車の設計などによって変わるものであり,図1-3に示した流れの広がりに依存する.ここでは,風車の出力とは風から単位時間当たりに得ることのできるエネルギーを意味する.風車がない場合には,図1-4のように流れの広がりはなく,風速も変化しない.

図1-3

図1-4


(8) (7)で得られた出力 P を最大にする a の値を求めよ.また,そのときの出力の最大値 P_{\mbox{max}} を求めよ.

(9) 風車の効率は,羽根車の面積 A に風速 V_1流入する単位時間あたりのエネルギー \dfrac{1}{T}E_T(V_1) に対する出力 P の比,つまり
e=\dfrac{P}{\dfrac{1}{T}E_T(V_1)}……⑤
と与えられる.(8)で得られた最大出力 P_{\mbox{max}} の場合の e の値を求めよ.

(10) 実際には(9)で得られた効率に加えて,粘性や機械損失のため,大型風車の効率は総合的におよそ e=0.5 となっている.e=0.5 のとき,風車半径 40\mbox{m},中心高さの風速 10\mbox{m/s},空気密度 1.3\mbox{kg/m}^3 の場合の出力 P[\mbox{kW}] を有効数字2桁で求めよ.

[2] 図2-1のように均質な直方体の物体が,面\rm ABCD が水平な状態で水に浮いて静止している.


TBA