[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1993年(平成5年)東京大学後期-数学[3]

2020.08.10記

[3] 放物線の一部 y=x^20\leqq x\leqq 2y 軸のまわりに回転してできる回転体型の容器に水を満たし,このなかに,半径 r の鉛の球を,それが容器につかえて止るまでゆっくり沈めた.ただし,鉛直線を y 軸とする。このとき次の問いに答えよ.

(1) もとの水面の高さから球の中心の高さを引いた差 sr の関数として表わせ.

(2) あふれ出る水の体積を最大にする r の値を求めよ.

本問のテーマ
放物線の法線の性質
回転放物体の体積は円柱の半分
シンプソンの公式(ケプラーの樽公式)

2020.08.10記
「回転放物体の体積は円柱の体積の半分 \dfrac{1}{2}\pi r^2 hとなる」

「放物線 y=ax^2 上の点における法線と軸の交点は、いつも同じ高さ \dfrac{1}{2a} だけずれたところにあ る。このずれの量は焦点と準線の距離に等しい」

「シンプソンの公式の特別な場合,1-4-1の公式」
(2024.01.09追記 シンプソンの公式(ケプラーの樽公式) - 球面倶楽部 零八式 mark II 参照)

という事実を用いる.2番目の事実から,y=ax^2 の頂点で接する内接円の最大半径は\dfrac{1}{2|a|}となることがわかる.

[解答]
(1) (i) 0\leqq r\leqq \dfrac{1}{2}のときは,球は頂点まで沈むので s=4-r となる.

(ii) \dfrac{1}{2}\leqq r\leqq \sqrt{2^2+\dfrac{1}{2}}=\dfrac{\sqrt{17}}{2} のときは,球は側面で接する.接点の x 座標を t とすると
t^2+\Bigl(\dfrac{1}{2}\Bigr)^2=r^2
が成立するので,s=4-\dfrac{1}{2}-t^2=\dfrac{15}{4}-r^2 となる.

(iii) \dfrac{\sqrt{17}}{2}\leqq r のときは,球は容器からはみでる.このとき
s^2+2^2=r^2
が成立し,s\lt 0より s=-\sqrt{r^2-4} となる.

(2) 球の上端が丁度水面にあるときの接点の x 座標を t とすると
t^2+\dfrac{1}{2}+r=4
が成立する.一方 t^2+\Bigl(\dfrac{1}{2}\Bigr)^2=r^2 でもあるから,r\gt 0 を求めると r=\sqrt{2}-\dfrac{1}{2} となる.

あるれる水の体積 V は球の水中部分の体積に等しく,0\leqq r\leqq \sqrt{2}-\dfrac{1}{2} で単調増加となる.また(iii)の範囲では単調減少であるから,V の最大値は  \sqrt{2}-\dfrac{1}{2}\leqq r\leqq\dfrac{\sqrt{17}}{2} の範囲で実現される.この r はすべて(ii)の範囲内である.

 \sqrt{2}-\dfrac{1}{2}\leqq r\leqq\dfrac{\sqrt{17}}{2} の範囲における球の水中部分の体積 V は,上端の面積が \pi (r^2-s^2) であり、 下端の面積が0であり、真中の断面積が \pi \Bigl\{r^2-\Bigl(\dfrac{s-r}{2}\Bigr)^2\Bigr\} であり、高さが r+sであるから
 V=\pi\Bigl[ (r^2-s^2)+4\Bigl\{r^2-\Bigl(\dfrac{s-r}{2}\Bigr)^2\Bigr\}+0\Bigr]\times\dfrac{r+s}{6}=\dfrac{\pi (2r-s)(r+s)^2}{3}
となる.s=\dfrac{15}{4}-r^2 により \dfrac{ds}{dr}=-2r に注意すると
\dfrac{3}{\pi}\cdot\dfrac{dV}{dr} =(2+2r)(r+s)^2+(2r-s)\cdot 2(r+s)(1-2r) =6r(r+s)(1+s-r)
が成立する.r,r+s\gt 0 により,
 \sqrt{2}-\dfrac{1}{2}\leqq r\leqq\dfrac{\sqrt{17}}{2} の範囲において1+s-r=0,つまり
r^2+r-\dfrac{19}{4}\Longleftrightarrow r=\dfrac{2\sqrt{5}-1}{2}
V極値をとり,その前後で \dfrac{dV}{dr} は符号を正から負に変化するので極大かつ最大となる.

なお,r が最大となるときの球の位置は,\dfrac{s+(-r)}{2}=-\dfrac{1}{2} であることから,球と放物面が水面と球の下端との真中の高さで接するときとなる.

実は,ほとんど計算せずに図で解く方法もあるのだが,図を描くのが面倒である.要は,はみだしけずり論法を使う.

[うまい解答]
y=Y における球の断面積 \pi S(Y) は,球の中心の y 座標を \alpha とおくと,
 S(Y)=r^2-(Y-\alpha)^2Y^2 の係数が -1 の2次関数で与えられる.

回転放物線の y=Y における断面積は,\pi Y だから,
 u=y0\leqq y\leqq 4) と u=S(y) の位置関係について考えれば良い.

放物線 u=S(y) の傾きが1の接線が接点 \Bigl(\alpha-\dfrac{1}{2},r^2-\dfrac{1}{4}\Bigr) において実現されることから,

(i) 0\leqq\alpha\leqq\dfrac{1}{2} のとき,S(0)=0 より r=\alpha となるので s=4-\alpha=4-r となる.

(ii) \dfrac{1}{2}\leqq\alpha\leqq\dfrac{9}{2} のとき,\alpha-\dfrac{1}{2}=r^2-\dfrac{1}{4} となるので s=4-\alpha=\dfrac{15}{4}-r^2 となる.

(iii) \alpha\leqq\dfrac{9}{2} のとき,S(4)=4 より 4=-(4-\alpha)^{2}+r^2 となるので s=4-\alpha=-\sqrt{r^2-4} (∵s\lt 0)となる.

(2) (i)の範囲で単調増加,(iii)の範囲で単調減少となるので(ii)の場合で考えれば良い.

はみだしけずり論法から,y=\alpha-r における水の断面積と、y=4における水の断面積が等しいときにあるれ出る水の体積が最大となる.このとき,その中点が接点となることから
(\alpha-r)+4=2\Bigl(\alpha-\dfrac{1}{2}\Bigr),つまり
r=5-\alpha=\dfrac{19}{4}-r(∵\alpha\leqq \dfrac{9}{2})となり,
 r=\dfrac{2\sqrt{5}-1}{2} となる.