[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1992年(平成4年)東京大学後期-理I・総合科目II[1]

[1]

図(a)のようなピンホールカメラにおいて,実体 \rm P が撮像面に投影像 {\rm p} として映る. \rm P\rm p の関係を考えるために,3次元座標系 {\rm O}-XYZ 及び,Z=-f の位置に図(b)のように2次元座標系 {\rm o}-xy を持つ撮像面をおく.以下の問に答えよ.

図(a)
図(b)


(1) 空間の点 {\rm P}(X,Y,Z) が投影される点を {\rm p}(x,y)とするとき,x,yX, Y,Z ,f で表せ.

(2) 空間の点 {\rm P}_0(X_0,Y_0,Z_0) を通り,方向ベクトルが (m_1, m_2, m_3) で,撮像面に平行でない直線 \rm L 上の点 \rm P の投 影される点を p とする.点 \rm P無限遠へ移動する場合に,\rm p が収束する点は,直線 \rm Lの消失点と呼ばれる.消失点の座標を求めよ.

(3) 空間の点 {\rm P}_0(X_0,Y_0,Z_0) を通り,法線ベクトルが (n_1,n_2,n_3) で,撮像面に平行でない平面を考える.この平面上の直線の消失点の全体の集合を求めよ.

(4) 空間中の2直線が直交している時,それぞれの消失点が撮像面上の (a,b)(a', b') で表わされる時の a,b,a',b' の間の関係式を求めよ.

2021.02.14記
カメラの幾何学(コンピュータビジョン)
射影幾何学

[解答]

(1) x=\dfrac{fX}{Z}y=\dfrac{fY}{Z}

(2) X=X_0+tm_1Y=Y_0+tm_2Z=Z_0+tm_3(t\in\mathbb{R}) として t\to\infty とすると x\to\dfrac{fm_1}{m_3}y\to\dfrac{fm_2}{m_3} だから\Bigl(\dfrac{fm_1}{m_3},\dfrac{fm_2}{m_3}\Bigr)

(3) (2)の直線が(3)の平面の含まれる条件は n_1m_1+n_2m_2+n_3m_3=0 であり,(x,y)=\Bigl(\dfrac{fm_1}{m_3},\dfrac{fm_2}{m_3}\Bigr) から n_1 x+n_2 y +n_3f=0

(4) 消失点が (a,b) となる直線の方向ベクトルは (a,b,f) に平行であるから,(a,b,f)(a',b',f) が直交すれば良く,aa'+bb'+f^2=0

カメラの幾何学で,直線の方向ベクトルや平面の法線ベクトルの像を統一的に捉える話は

画像理解 POD版 - 3次元認識の数理

画像理解 POD版 - 3次元認識の数理

に詳しい.