[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2023年(令和5年)東京大学-数学(文科)[4]

2023.11.22記

[4] 半径1の球面上の相異なる4点\mbox{A}\mbox{B}\mbox{C}\mbox{D}\mbox{AB}=1\mbox{AC}=\mbox{BC}\mbox{AD}=\mbox{BD}\cos\angle{\mbox{ACB}}=\cos\angle{\mbox{ADB}}=\dfrac{4}{5} を満たしているとする.

(1) 三角形\mbox{ABC}の面積を求めよ.

(2) 四面体\mbox{ABCD}の体積を求めよ.

2023.11.23記

[解答]
(1) \mbox{AB} の中点を \mbox{M} とおき,\angle\mbox{ACM}=\thetaとおくと,\theta は鋭角で \cos2\theta=\dfrac{4}{5}=2\cos^2\theta-1 より
\cos\theta=\dfrac{3}{\sqrt{10}}\sin\theta=\dfrac{1}{\sqrt{10}}
となる.

よって \tan\theta=\dfrac{1}{3} となり,
\mbox{CM}=\dfrac{\mbox{AM}}{\tan\theta}=\dfrac{3}{2}
となる.ゆえに
\triangle\mbox{ABC}=\mbox{AM}\cdot\mbox{CM}=\dfrac{3}{4}
となる.

(2) 球の中心を \mbox{O} とすると,図形が平面 \mbox{MCD} に関して対称であることから, \mbox{O} は平面 \mbox{MCD} 上にあり,\triangle\mbox{MCD}\mbox{MC}=\mbox{MD}二等辺三角形であるから,\mbox{O}\triangle\mbox{MCD}\mbox{M} を通る中線上にある.この中線と \mbox{CD} の交点は \mbox{CD} の中点であり,これを \mbox{N} とおく.

\mbox{OM}=\sqrt{\mbox{OA}^2-\mbox{AM}^2}=\dfrac{\sqrt{3}}{2}
であり,
\mbox{MN}^2-\mbox{ON}^2=\mbox{MD}^2-\mbox{DN}^2=\dfrac{5}{4}
から
\mbox{OM}(\mbox{OM}+2\mbox{ON})=\dfrac{5}{4}
つまり \dfrac{\sqrt{3}}{2}(\dfrac{\sqrt{3}}{2}+2\mbox{ON})=\dfrac{5}{4} から
\mbox{ON}=\dfrac{\sqrt{3}}{6}
となる.

よって \mbox{MN}=\dfrac{2\sqrt{3}}{3}\mbox{ND}=\sqrt{1-\mbox{ON}^2}=\dfrac{\sqrt{33}}{6}
となる.

以上から,\triangle\mbox{MCD}=\mbox{MN}\cdot\mbox{ND}=\dfrac{\sqrt{11}}{3}
となり,求める体積は
\dfrac{1}{3}\cdot\triangle\mbox{MCD}\cdot\mbox{AB}=\dfrac{\sqrt{11}}{9}
となる.

四面体の体積を6辺の長さから表す公式がある.
四面体の体積を求めるオイラーの公式 - 球面倶楽部 零八式 mark II

それは対応する Cayley-Menger 行列の行列式\dfrac{1}{288}倍の平方根が体積となるという公式である.

実は、四面体の外接球の半径を6辺の長さから表す公式がある.

四面体の外接球の半径を6辺の長さで表す - 球面倶楽部 零八式 mark II

四面体 {\rm O-ABC} において,{\rm OA}=a{\rm OB}=b{\rm OC}=c{\rm AB}=z{\rm BC}=x{\rm CA}=y とする.ここで x,y,za,b,c それぞれの対辺となっていることに注意.

このとき,四面体の外接球の半径は,四面体の(6辺の長さから計算できる)体積 V を利用すると,
R=\dfrac{1}{24V}\sqrt{(ax+by+cz)(-ax+by+cz)(ax-by+cz)(ax+by-cz)}
が成立するというものである.本問の場合は
a=\mbox{AD}=\dfrac{\sqrt{10}}{2}
b=\mbox{BD}=\dfrac{\sqrt{10}}{2}
c=\mbox{CD}
x=\mbox{BC}=\dfrac{\sqrt{10}}{2}
y=\mbox{AC}=\dfrac{\sqrt{10}}{2}
z=\mbox{AB}=1
R=1
とおくと
V=\dfrac{1}{24}\sqrt{(5+\mbox{CD})\cdot \mbox{CD}\cdot \mbox{CD}\cdot (5-\mbox{CD})}=\dfrac{1}{24}\sqrt{(25-\mbox{CD}^2)\cdot \mbox{CD}^2}
であるから,\mbox{CD}が求まれば体積も求まる.

ここで \mbox{CD}=\dfrac{\sqrt{33}}{3} だから
V=\dfrac{1}{24}\sqrt{\dfrac{64}{3}\cdot\dfrac{11}{3}}=\dfrac{\sqrt{11}}{9}
となる.

もちろん,実際に入試で使った方が有利になるような公式ではない.