[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2021年(令和3年)早稲田大学理工学部-数学[3]

2022.03.05記

[3] r を実数とする。次の条件によって定められる数列 \{a_n\}\{b_n\}\{c_n\} を考える
a_1=ra_{n+1}=\dfrac{[a_n]}{4}+\dfrac{a_n}{4}+\dfrac{5}{6}n=1,2,3,\cdots
b_1=rb_{n+1}=\dfrac{a_n}{2}+\dfrac{7}{12}n=1,2,3,\cdots
c_1=rc_{n+1}=\dfrac{a_n}{2}+\dfrac{5}{6}n=1,2,3,\cdots
ただし,[x]x を超えない最大の整数とする。以下の問いに答えよ。

(1) \displaystyle\lim_{n\to\infty} b_n\displaystyle\lim_{n\to\infty} c_n を求めよ。

(2) b_n\leqq a_n\leqq c_nn=1,2,3,\cdots)を示せ。

(3) \displaystyle\lim_{n\to\infty} a_n を求めよ。


2022.03.05記
a_n\alpha に収束するならば,十分大きな n に対して a_n\alpha に十分近いので,
\alpha が整数でなければ,[a_n]=[\alpha] が成立することになる。という考え方をするので,\varepsilon-N 論法をやったことがある人は有利かも。

[解答]

(1) b_{n+1}-\dfrac{7}{6}=\dfrac{1}{2}\left(b_{n}-\dfrac{7}{6}\right)=\dfrac{1}{2^{n-1}}\left(r-\dfrac{7}{6}\right)
により,b_n\to\dfrac{7}{6}n\to\infty)である.

c_{n+1}-\dfrac{5}{3}=\dfrac{1}{2}\left(c_{n}-\dfrac{5}{3}\right)=\dfrac{1}{2^{n-1}}\left(r-\dfrac{5}{3}\right)
により,b_n\to\dfrac{5}{3}n\to\infty)である.


(2) a_k-1\lt[a_k]\leqq a_k が任意の自然数 k について成立することに注意する。

b_n\leqq a_n\leqq c_nn=1,2,3,\cdots)を数学的帰納法で示す。

n=1 のとき,b_1=a_1=c_1 より成立する。

n=k のとき,b_k\leqq a_k\leqq c_k を仮定すると,

a_{k+1}\leqq \dfrac{a_k}{4}+\dfrac{a_k}{4}+\dfrac{5}{6}=\dfrac{a_k}{2}+\dfrac{5}{6}\leqq\dfrac{c_k}{2}+\dfrac{5}{6}=c_{k+1}
および
a_{k+1}\gt \dfrac{a_k-1}{4}+\dfrac{a_k}{4}+\dfrac{5}{6}=\dfrac{a_k}{2}+\dfrac{7}{12}\leqq\dfrac{b_k}{2}+\dfrac{7}{12}=b_{k+1}
により,n=k+1 のときも成立する。

よって帰納的に任意の自然数 n について題意は成立する。

(3) (2) により,\displaystyle\lim_{n\to\infty} b_n\leqq \displaystyle\lim_{n\to\infty} a_n\leqq \displaystyle\lim_{n\to\infty} c_n であるから,(1) より十分大きな自然数 N が存在して \dfrac{7}{6}\leqq a_n\leqq\dfrac{5}{3}n\gt N)が成立する.このとき [a_n]=1 であるから,
a_{n+1}=\dfrac{a_n}{4}+\dfrac{13}{12}n\gt N
が成立する。よって
a_{n+1}-\dfrac{13}{9}=\dfrac{1}{4}\left(a_{n}-\dfrac{13}{9}\right)=\dfrac{1}{4^{n-N}}\left(a_N-\dfrac{13}{9}\right)
となり,a_n\to\dfrac{13}{9}n\to\infty)である.

\varepsilon-N 論法の説明をした後のレポート問題として良さそうだ。