[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2024年(令和6年)早稲田大学理工学部-数学[1]

2024.02.17記

[1] 円 C:x^2-(y-1)^2=1 に接する直線で,x 切片,y 切片がともに正であるものを \ell とする.C\ellx 軸により囲まれた部分の面積を SC\elly 軸により囲まれた部分の面積を T とする.S+T が最小となるとき,S-T の値を求めよ.

2024.02.17記
図形を y 軸対称にしたものとあわせて考えれば,半径1の円に外接する三角形の面積が最小になる場合だから正三角形が登場するのは明らかだろう.

[うまい解答]
\elly 軸対称した直線を m とすると,C\ellm で囲まれた三角形は単位円に外接し,その面積は 2(S+T)+\pi となる.

ここで半径1の円に外接する三角形の面積が最小となるのは,それが(一辺の長さが  2\sqrt{3} の)正三角形のときである.

実際,三角形の3角を 2\alpha,2\beta,2\gamma\alpha+\beta+\gamma=\dfrac{\pi}{2})とおくと
その面積が \dfrac{1}{\tan\alpha}+\dfrac{1}{\tan\beta}+\dfrac{1}{\tan\gamma} であり,0\lt x\lt\dfrac{\pi}{2}\tan x が下に凸であることと Jensen の不等式から,
\dfrac{1}{\tan\alpha}+\dfrac{1}{\tan\beta}+\dfrac{1}{\tan\gamma}\leqq 3\cdot\dfrac{1}{\tan\dfrac{\alpha+\beta+\gamma}{3}}=3\sqrt{3}
(等号は \alpha=\beta=\gamma=\dfrac{\pi}{6}
となるからである.

よって S+T が最小となるときの \ell\dfrac{x}{\sqrt{3}}+\dfrac{y}{3}=1
m-\dfrac{x}{\sqrt{3}}+\dfrac{y}{3}=1)となる.

2(S+T)+\pi=(1辺の長さが 2\sqrt{3} の正三角形の面積)=3\sqrt{3}T=\dfrac{S}{2}

となるので,T=\dfrac{\sqrt{3}}{2}-\dfrac{\pi}{6} であり
S-T=T=\dfrac{\sqrt{3}}{2}-\dfrac{\pi}{6} となる.

円外の点から円に2本の接線を引く構図なので,x 軸と \ell のなす角度を 2\theta をおくのは基本的な設定である.

[解答]
\ellx 切片を \mbox{A}\elly 切片を \mbox{B}C\ell の接点の座標を \mbox{P} とおく.

\mbox{A}\left(\dfrac{1}{\tan\theta},0\right)0\lt\theta\lt\dfrac{\pi}{4}) とおくと
\mbox{B}\left(0,\dfrac{\tan2\theta}{\tan\theta}\right)=\left(0,\dfrac{2}{1-\tan^2\theta}\right)
であるから,t=\tan\theta0\lt t\lt 1)とおくと,S+T が最小となるのは,それに半円の面積を加えた三角形の面積 \dfrac{1}{t-t^3} が最小となるときで,f(t)=t-t^30\lt t\lt 1)が最大となるときである.

これは3次関数の形状を考えれば f(t)t=\dfrac{1}{\sqrt{3}} において極大かつ最大となることがわかる.よって S+T\theta=\dfrac{\pi}{6} で最小となる.

このとき,
S=\sqrt{3}-\dfrac{\pi}{3}T=\dfrac{\sqrt{3}}{2}-\dfrac{\pi}{6}=\dfrac{S}{2}
だから,S-T=T=\dfrac{\sqrt{3}}{2}-\dfrac{\pi}{6}
となる.

機械的なアプローチは,切片方程式から \ell を定めて点と直線の距離の公式から \ell の方程式を1パラメータで表現することである.

[別解]
\ellx 切片,y 切片をそれぞれ a,ba\gt 1,b\gt 2[)とすると,\ell の方程式は
\dfrac{x}{a}+\dfrac{y}{b}=1,つまり bx+ay+ab
であり,(0,1)\ell の距離が 1 であることから
a(b-1)=\sqrt{a^2+b^2}
となり,整理して b=\dfrac{2a^2}{a^2-1} となる.

S+T が最小となるのは,それに半円の面積を加えた三角形の面積 A=\dfrac{ab}{2}=\dfrac{a^3}{a^2-1}a\gt 1) が最小となるときで,
f(a)=\dfrac{1}{A}=\dfrac{1}{a}-\dfrac{1}{a^3}
が最大になるときである.ここで
f'(a)=-\dfrac{1}{a^2}+\dfrac{3}{a^4}=\dfrac{3-a^2}{a^4}
であるから,a\gt 1 のとき f'(a)a=\sqrt{3} の前後で符号を正から負に変えることから増減表(略)により,a=\sqrt{3}f(a) は最大となり,よって S+T は最小になる.このとき b=3 となる.

このとき,
S=\sqrt{3}-\dfrac{\pi}{3}T=\dfrac{\sqrt{3}}{2}-\dfrac{\pi}{6}=\dfrac{S}{2}
だから,S-T=T=\dfrac{\sqrt{3}}{2}-\dfrac{\pi}{6}
となる.