[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2020年(令和2年)東京工業大学-数学[5]

2024.09.21記

[5] k を正の整数とし,a_k=\displaystyle\int_0^1 x^{k-1}\sin\left(\dfrac{\pi x}{2}\right)\, dx とおく.

(1) a_{k+2}a_kk を用いて表せ.

(2) k を限りなく大きくするとき,数列 \{ka_k\}極限値 A を求めよ.

(3) (2)の極限値 A に対し,k を限りなく大きくするとき,数列 \{k^ma_k-k^nA\}0 ではない値に収束する整数 m,nm\gt n\geqq 1)を求めよ.またそのときの極限値 B を求めよ.

(4) (2)と(3)の極限値 A,B に対し,k を限りなく大きくするとき,数列 \{k^pa_k-k^qA-k^rB\}0 ではない値に収束する整数 p,q,rp\gt q\gt r\geqq 1)を求めよ.またそのときの極限値を求めよ.

2024.09.21記
実数列 A_k に対して k^{\alpha} A_kk\to\infty0 でない実数に収束するような \alpha は高々1つであることは自明として良いでしょう.心配ならば[解答]のように書いておくと良い


[解答]
(1) a_{k+2}=\displaystyle\int_0^1 x^{k+1}\sin\left(\dfrac{\pi x}{2}\right)\, dx=\Bigl[-\dfrac{2}{\pi} x^{k+1}\cos\left(\dfrac{\pi x}{2}\right)\Bigr]_0^1+\dfrac{2}{\pi}(k+1)\displaystyle\int_0^1 x^{k}\cos\left(\dfrac{\pi x}{2}\right)\, dx
=\dfrac{2}{\pi}(k+1)\displaystyle\int_0^1 x^{k}\cos\left(\dfrac{\pi x}{2}\right)\, dx
=\Bigl[\dfrac{4}{\pi^2}(k+1)x^{k}\sin\left(\dfrac{\pi x}{2}\right)\Bigr]_0^1-\dfrac{4}{\pi^2}k(k+1)\displaystyle\int_0^1 x^{k-1}\sin\left(\dfrac{\pi x}{2}\right)\, dx
=\dfrac{4}{\pi^2}(k+1)-\dfrac{4}{\pi^2}k(k+1)a_k
である.

(2) b_k=ka_k とおくと
\dfrac{b_{k+2}}{(k+1)(k+2)}=\dfrac{4}{\pi^2}-\dfrac{4}{\pi^2}b_k
である.a_k の定義である定積分被積分関数は非負であり恒等的に0でないから,任意の正の整数 k に対して a_k\gt 0 より b_k\gt 0 である.

よって \dfrac{b_{k+2}}{(k+1)(k+2)}=\dfrac{4}{\pi^2}-\dfrac{4}{\pi^2}b_k から 0\lt b_k\lt 1 が全ての k について成立し,
0\lt |b_k-1|=\dfrac{\pi^2}{4(k+1)(k+2)}b_k\lt \dfrac{\pi^2}{4(k+1)(k+2)}
が成立する.k\to\infty で右辺は0に近づくのではさみうちの原理から b_k\to 1 である.よって A=1 となる.

以下,実数列 A_k に対して k^{\alpha} A_kk\to\infty0 でない実数に収束するような実数 \alpha は高々1つであることを用いる.実際,k\to\infty| k^{\alpha} A_k| \to C(\gt 0) のとき,任意の正の数 \varepsilon に対して k\to\inftyk^{\varepsilon}\to+\infty となるので,
| k^{\alpha+\varepsilon} A_k|=k^{\varepsilon}\cdot | k^{\alpha} A_k| \to +\infty
| k^{\alpha-\varepsilon} A_k|=\dfrac{| k^{\alpha} A_k|}{k^{\varepsilon}} \to 0
となるからである.よって(3)(4)を満たすものは高々1つであり,1つ見つかればそれが全てである.

(3) c_k=1-b_k とおくと k\to\inftyc_k\to 0 である.
\dfrac{1-c_{k+2}}{(k+1)(k+2)}=\dfrac{4}{\pi^2}c_k
となり
\dfrac{k^2(1-c_{k+2})}{(k+1)(k+2)}=\dfrac{4}{\pi^2}k^2c_k
が成立する.この左辺は k\to\infty1 に近づくので k^2c_k\to \dfrac{\pi^2}{4} である.

注)この部分は 0\lt c_k\lt 1 から
0\lt \left|k^2c_k-\dfrac{\pi^2}{4}\right|=\dfrac{\pi^2}{4}\cdot \dfrac{3k+2+c_{k+2}}{(k+1)(k+2)}\lt \dfrac{\pi^2}{4}\cdot \dfrac{3k+3}{(k+1)(k+2)}
となり,k\to\infty で右辺は0に近づくのではさみうちの原理を用いても良い.

ここで k^2c_k=k^2-k^3a_k であるから,k^3a_k-k^2A\to -\dfrac{\pi^2}{4} である.よって m=3,n=2B=-\dfrac{\pi^2}{4} となる.

(4) d_k=\dfrac{\pi^2}{4}-k^2c_k とおくと k\to\inftyd_k\to 0 である.
\dfrac{k^2+d_k-\dfrac{\pi^2}{4}}{(k+1)(k+2)}=\dfrac{4}{\pi^2}\left(\dfrac{\pi^2}{4}-d_k\right)
つまり
\dfrac{k\left(3k+2-d_k+\dfrac{\pi^2}{4}\right)}{(k+1)(k+2)}=\dfrac{4}{\pi^2}kd_k
が成立する.この左辺は k\to\infty3 に近づくので kd_k\to \dfrac{3\pi^2}{4} である.

ここで kd_k=-kB-k^3A+k^4a_k であるから,
k^4a_k-k^3A-kB\to \dfrac{3\pi^2}{4} である.
よって p=4,q=3,r=1,求める極限値\dfrac{3\pi^2}{4} である.