[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1935年(昭和10年)東京帝國大學農學部-數學[4]

2020.04.20記

[4] 四邊形ノ各邊ノ長さ夫々一定ナルトキ其面積最大ナルモノヲ求ム.

本問のテーマ
Bretschneider の公式
Brahmagupta の公式

2020.04.20記
Bretschneider の公式
ブレートシュナイダーの公式 - Wikipedia
Brahmagupta の公式
ブラーマグプタの公式 - Wikipedia

[大人の解答]
四角形の辺の長さを a,b,c,dとし,1組の向い合う角度の和を \alpha とする(他方の組は 2\pi-\alpha).

このとき,Bretschneider の公式より,四角形の面積 Ss=\dfrac{a+b+c+d}{2} を用いて
 S^2=(s-a)(s-b)(s-c)(s-d)-abcd\cos^2\dfrac{\alpha}{2} (他方の組を用いても同じ値になることに注意)
となるので,S\alpha=\pi のときに最大値
=\sqrt{(s-a)(s-b)(s-c)(s-d)}=\dfrac{1}{4}\sqrt{(-a+b+c+d)(a-b+c+d)(a+b-c+d)(a+b+c-d)}
をとる.等号成立は四角形が円に内接するときである.

とするのが最速解法だが、Bretschneider の公式を導くのが面倒なので、素直に解く方が速い。

[解答]
四角形 \rm ABCD とし,その面積をS とする.また,\rm AB=a\rm BC=b\rm CD=c\rm DA=d とおく.\angle\rm DAB=\theta\angle\rm BCD=\varphi とする.

このとき
 S=\dfrac{1}{2}(ad\sin \theta+bc\sin\varphi)
であり,
\rm BD=a^2+d^2-2ad\cos\theta=b^2+c^2-2bc\cos\varphi
からad\sin\theta\, d\theta= bc\sin \varphi\, d\varphi となるので,
 2\cdot \dfrac{dS}{d\theta}=ad\cos\theta+bc\cos\varphi\cdot\dfrac{ad\sin\theta}{bc\sin\varphi}=ad\cdot\dfrac{\sin\varphi\cos\theta+\cos\varphi\sin\theta}{\sin\varphi}=ad\cdot\dfrac{\sin(\varphi+\theta)}{\sin\varphi}
が成立する.\dfrac{dS}{d\theta}=0 なる \theta \theta=\pi-\varphi で,この前後で符号を正から負に転ずるので極大かつ最大となる.(0\lt \varphi\lt \pi より \sin\varphi\gt0

よって四角形が円に内接するときに面積が最大となり,その面積は Brahmagupta の公式より
S=\dfrac{1}{4}\sqrt{(-a+b+c+d)(a-b+c+d)(a+b-c+d)(a+b+c-d)}
となる.

■ Brahmagupta の公式を証明しながら用いるならば,
S=\dfrac{1}{2}(ad\sin \theta+bc\sin\theta)=\dfrac{1}{2}(ad+bc)\sqrt{1-\cos^2\theta}
において,四角形の対角線の片方を求める式
a^2+d^2-2ad\cos\theta=b^2+c^2+2bc\cos\theta
から得られる
\cos\theta=\dfrac{a^2+d^2-b^2-c^2}{2(ad+bc)}
を代入すれば
S=\sqrt{4(ad+bc)^2-(a^2+d^2-b^2-c^2)^2}
が得られ,これを因数分解すれば良い.