[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1937年(昭和12年)東京帝國大學理學部-數學[2]

2022.08.11記

[2] 半徑aナル圓ノ中心ガ直交軸ノy軸上ヲ運動スルトキ,二直線y=0及ビx+y=2aノ間ニ挟マルゝ部分ノ面積ガ最大トナル如キ中心ノ位置ヲ求ム.

2022.08.23記
はみだしけずり論法(変分)を考えれば良い.

[解答]
問題文より a\gt 0 であるとし,xy平面を(図形全体を)原点中心に \dfrac{1}{a} 倍拡大したものを XY 平面として,XY 平面で考えると,「半径が1の円の中心が y 軸上を運動するとき,2直線 y=0 および x+y=2 の間に挟まれる部分の面積が最大となるときの中心の位置を求めよ」という問題になる.

円の中心を {\rm P}(0,p) とする.\rm PY=0 との距離は |p| だから,この直線と円が交わる条件は -1\leqq p\leqq 1 である.また,\rm PX+Y=2 との距離は \dfrac{|p-2|}{\sqrt{2}} だから,この直線と円が交わる条件は 2-\sqrt{2}\leqq p\leqq 2+\sqrt{2} である.

囲まれる部分の面積を S(p) とする.

(i) p\leqq -1 のとき:
2直線は円の外部にあるので,挟まれる部分の面積は S(p)=0 である.

(ii) -1\leqq p\leqq 2-\sqrt{2} のとき:
円の Y=0 による切り口の長さは l_1(p)=2\sqrt{1-p^2} であるから,
\dfrac{dS}{dp}=2\sqrt{1-p^2}\gt 0
だから,挟まれる部分の面積 S(p) は単調に増加する.

(iii) 2-\sqrt{2}\leqq p\leqq 1 のとき:
円の Y=0 による切り口の長さは l_1(p)=2\sqrt{1-p^2},円の X+Y=2 による切り口の長さは l_2(p)=2\sqrt{1-\dfrac{(p-2)^2}{2}}=\sqrt{4-2(p-2)^2} であるから,
\dfrac{dS}{dp}=l_1(p)-\dfrac{l_2(p)}{\sqrt{2}}=2\sqrt{1-p^2}-\sqrt{2-(p-2)^2}
となる.\dfrac{dS}{dp}=0 となるのは 3p^2+4p-6=0 から p=\dfrac{-2\pm\sqrt{22}}{3} となるが
\dfrac{-2-\sqrt{22}}{3}\lt \dfrac{-2-\sqrt{16}}{3}\lt -2 \lt 2-\sqrt{2} \lt 0 \lt  \dfrac{-2+\sqrt{22}}{3}\lt \dfrac{-2+5}{3}\lt 1
より,この区間での増減は

p 2-\sqrt{2} \cdots \dfrac{-2+\sqrt{22}}{3} \cdots 1
\dfrac{dS}{dp} + 0 -
S \nearrow 極大 \searrow

となり,p=\dfrac{-2+\sqrt{22}}{3} で極大となる.

(iv) 1\leqq p\leqq 2+\sqrt{2} のとき:
円の X+Y=2 による切り口の長さは l_2(p)=\sqrt{2}\sqrt{1-\dfrac{(p-2)^2}{2}} であるから,
-\dfrac{l_2(p)}{\sqrt{2}}=-\sqrt{2-(p-2)^2}
だから,挟まれる部分の面積 S(p) は単調に減少する.

(v) 2+\sqrt{2}\leqq p のとき:
2直線は円の外部にあるので,挟まれる部分の面積は S(p)=0 である.

以上から,p=\dfrac{-2+\sqrt{22}}{3} で最大となる.よって xy 平面に戻して求める中心の位置は
\left(0,\dfrac{-2+\sqrt{22}}{3}a\right)
となる.