[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1953年(昭和28年)東京大学-数学(解析II)[3]

[3] 放物線 y=x^2 がある.点(1,2) を通る弦のうちで,その放物線と囲む面積の最小なるものを求めよ.

2020.09.24記
良く知られているように点 (1,2) が弦の中点となる場合に最小.

x=1 における y 座標の差が 1 だから,弦と放物線の交点は 1\pm\sqrt{1}=0,2 となる.

よって弦の両端は(0,0),(2,4) となる.

2024.09.23記
上記のアイディアを説明しながら答案にすると少し冗長だが次のようになる.

[解答]
弦の式を y=l(x) とおき,その両端の x 座標を \alpha,\beta\alpha\lt\beta) とおくと,考える面積 S
S=\displaystyle\int_{\alpha}^{\beta} \{l(x)-x^2\}\,dx=\displaystyle\int_{\alpha}^{\beta} (x-\alpha)(\beta-x)\,dx
となる.この式は
放物線 y=-x^2+l(x)=-(x-\alpha)(x-\beta)x 軸で囲まれる部分の面積に等しい.

ここで放物線 y=-x^2+l(x)=-(x-\alpha)(x-\beta) の頂点 \left(\dfrac{\alpha+\beta}{2},\dfrac{(\beta-\alpha)^2}{4}\right) において,頂点の y 座標 \dfrac{(\beta-\alpha)^2}{4}Y とおくと
S=\displaystyle\int_{\alpha}^{\beta} (x-\alpha)(\beta-x)\,dx=\dfrac{(\beta-\alpha)^3}{6}=\dfrac{4\sqrt{Y}^3}{3}
であるから,放物線 y=-x^2+l(x) の頂点の y 座標 Y が最小のときに S も最小となる.

今、Y は同じ x に対する y=l(x)y 座標から y=x^2y 座標を引いたものの最大値でもあり,それは x=1 のときの (1,2)y 座標から y=x^2y 座標を引いた 1 以上であるから,Y\geqq 1 となる.ゆえに Y=1 となり得るならば,それが S の最小値を与える場合となる.

このとき,放物線 y=-x^2+l(x) の頂点の y 座標が 1 となれば良く,頂点の x 座標は (1,2) と同じ 1 であるから,放物線 y=-x^2+l(x) の頂点が (1,1),すなわち
-x^2+l(x)=-(x-1)^2+1
となれば良い.

以上から,l(x)=x^2-(x-1)^2+1=2x のときに面積が最小となり,このとき
\left(\dfrac{\alpha+\beta}{2},\dfrac{(\beta-\alpha)^2}{4}\right)=(1,1)
から \alpha=0,\beta=2 となるので弦の両端は(0,0),(2,4) となる.

標準的な解法

[解答]
(1,2) を通る弦を y=m(x-1)+2 とおき,これと放物線の交点を \mbox{P}(\alpha,\alpha^2)\mbox{Q}(\beta,\beta^2) とおくと,\alpha,\betax^2-mx+m-2=0 の2解であるから
\alpha+\beta=m\alpha\beta=m-2 であり,この2次方程式の判別式は
m^2-4m+8=(m-2)^2+4\gt 0
だから任意の実数 m に対して y=m(x-1)+2y=x^2 と相異なる2点で交わる.よって \alpha\lt \beta として良い.

このとき囲まれる部分の面積 S
S=\displaystyle\int_{\alpha}^{\beta} \{m(x-1)+2-x^2\}\,dx
=\displaystyle\int_{\alpha}^{\beta} (x-\alpha)(\beta-x)\,dx
=\dfrac{(\beta-\alpha)^3}{6}
=\dfrac{\{(m-2)^2+4\}^{3/2}}{6}
であるから,これは m=2 で最小となる.

よって求める弦は y=2x である(弦の両端は (0,0),(2,4)).