[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1990年(平成2年)東京大学前期-数学(理科)[2]

2019.04.03記

[2] 3次関数 h(x)=px^3+qx^2+rx+s は,次の条件(i),(ii)をみたすものとする.

(i) h(1)=1h(-1)=-1

(ii) 区間 -1\lt x\lt 1 で極大値 1,極小値 -1 をとる.

このとき,

(1) h(x) を求めよ.

(2) 3次関数 f(x)=ax^3+bx^2+cx+d区間 -1\lt x\lt 1-1\lt f(x)\lt 1 をみたすとき,|x|>1 なる任意の実数 x に対して不等式 |f(x)|\lt |h(x)| が成立することを証明せよ.

2019.04.03記
チェビシェフ多項式の問題。

(1) \cos 3\theta=4\cos^3\theta-3\cos\thetaからh(x)=4x^3-3x

(2) f(x)=h(x)をみたすx区間 -1\lt x\lt 1 に3つあるので、|\,x\,|\gt 1 の範囲でy=f(x)y=h(x)は交点をもたない。
同様にf(x)=-h(x)をみたすx区間 -1\lt x\lt 1 に3つあるので、|\,x\,|\gt 1 の範囲でy=f(x)y=-h(x)は交点をもたない。
x=\pm 1のとき、f(x)h(x)-h(x)の間にあるので、|\,x\,|\gt 1 の範囲でf(x)h(x)-h(x)の間にある。
よって、 |\,f(x)\,|\lt|\,h(x)\,| が成立する。

(1) \cos 3\theta=4\cos^3\theta-3\cos\thetaからh(x)=4x^3-3x

(2) f(x)=h(x)をみたすx区間 -1\lt x\lt 1 に3つあるので、|\,x\,|\gt 1 の範囲でy=f(x)y=h(x)は交点をもたない。
同様にf(x)=-h(x)をみたすx区間 -1\lt x\lt 1 に3つあるので、|\,x\,|\gt 1 の範囲でy=f(x)y=-h(x)は交点をもたない。
x=\pm 1のとき、f(x)h(x)-h(x)の間にあるので、|\,x\,|\gt 1 の範囲でf(x)h(x)-h(x)の間にある。
よって、 |\,f(x)\,|\lt|\,h(x)\,| が成立する。

2021.01.30記

[解答]
(1) 極大値 1,極小値 -1 をとる x\alpha,\beta とすると,
h(x)=p(x-1)(x-\alpha)^2+1=p(x+1)(x-\beta)^2-1
が成立する.係数比較をして
 2\alpha+1=2\beta-12\alpha+\alpha^2=-2\beta+\beta^21-p\alpha^2=-1+p\beta^2
が成立する.よって \alpha\neq\beta より \alpha=-\dfrac{1}{2}\beta=\dfrac{1}{2}p=4

(2) h(x)=4x^3-3x である.
g_1(x)=h(x)-f(x) とすると,
g_1(-1)=-1-f(-1)\lt 0g_1(-1/2)=1-f(-1/2)\gt 0g_1(1/2)=-1-f(1/2)\lt 0g_1(1)=1-f-1)\gt 0
であるから,h(x)=f(x) の解は -1\leqq x\leqq -\dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{2}\leqq x\leqq \dfrac{1}{2}\dfrac{1}{2}\leqq x\leqq  1 の範囲に少なくとも1つずつ存在し,3次方程式よりこれば全て.

同様に g_2(x)=h(x)+f(x) とすると,やはり h(x)=-f(x) の3つの解は |x|\lt 1 をみたすので.|h(x)|=|f(x)| の解は |x|\gt 1 には存在しない.

|x|=1 のとき |f(x)|\lt |h(x)| であるから,|x|\gt 1 においても |f(x)|\lt |h(x)| である.