[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2023年(令和5年)東京大学-数学(理科)[5]

2023.11.22記

[5] 整式 f(x)={(x-1)}^2(x-2) を考える.

(1) g(x) を実数を係数とする整式とし,g(x)f(x) で割った余りを r(x) とおく.{g(x)}^7f(x) で割った余りと {r(x)}^7f(x) で割った余りが等しいことを示せ.

(2) ab を実数とし,h(x)=x^2+ax+bと おく.{h(x)}^7f(x) で割った余りを h_1(x) とおき,{h_1(x)}^7f(x) で割った余りを h_2(x) とおく.h_2(x)h(x) に等しくなるような ab の組をすべて求めよ.

2023.11.23記
2022年(令和4年)九州大学前期-数学(III)[2] - [別館]球面倶楽部零八式markIISR
でも説明したが,
整式 f(x)(x-\alpha)(x-\beta)^2 で割った余りは
\left\{\dfrac{f'(\beta)}{\beta-\alpha}-\dfrac{f(\beta)-f(\alpha)}{(\beta-\alpha)^2}\right\}(x-\beta)^2+f'(\beta)(x-\beta)+f(\beta)
となる.

本問の場合,ここまで計算しなくても,H(x)=\{h(x)\}^{49}-h(x)(x-2)(x-1)^2 で割り切れれば良いので,
H(2)=H(1)=H'(1)=0
となるように a,b を求めれば良い.

なお,x-1=X とおくとT(X)=\{h(X+1)\}^{49}-h(X+1)(X-1)X^2 で割り切れれば良く,この条件から T(X) の1次の項と定数項が0になると考えることもできる.

[解答]
(1) g(x)=f(x)Q(x)+h(x) なる整式 Q(x) が存在し,
g(x)^7=f(x)\left\{\displaystyle\sum_{i=1}^7 {}_7\mbox{C}_i f(x)^{i-1} Q(x)^i r(x)^{7-i}\right\}+r(x)^7
であるから,g(x)^7f(x) で割った余りと r(x)^7f(x) で割った余りは等しい.

(2) (1)より H(x)=h(x)^{49}-h(x)f(x) で割り切れれば良く,その必要十分条件
H(2)=H(1)=H'(1)=0
である.
H(1)=h(1)\{h(1)^{48}-1\}=0
から h(1)=-1,0,1 であり,これと
H'(1)=\{49h(1)^{48}-1\}h'(1)=0
から h'(1)=0 となる.よって a=-2 であり h(x)=x^2-2x+b となり,h(1)=-1,0,1 から b=0,1,2 となる.

これら b のうち
H(2)=h(2)\{h(2)^{48}-1\}=0
をみたすのは,b=0,1 だから,求める答は (a,b)=(-2,0),(-2,1) となる.

[別解]
(2) X=x-1 とおき,h(x)=t(X)=X^2+pX+qT(X)=h(x)^{49}-h(x)=t(X)^{49}-t(X) とおくと,多項定理より
T(X)=X^2\cdot S(X) + 49pq^{48}X+q^{49}
となる整式 S(X) が存在する.ここで T(X)X^2(X-1) で割り切れるので
49pq^{48}=pq^{49}=q
が必要で,後者から q=-1,0,1 となり,これらいずれの場合も前者から p=0 となる.

このとき,T(1)=t(1)^{49}-t(1)=(1+q)\{(1+q)^{48}-1\}=0 をみたすのは q=-1,0 であるから (p,q)=(0,0),(0,-1) であり,これらから
t(X)=X^2,X^2-1,つまり h(x)=(x-1)^2,(x-1)^2-1 となるので,(a,b)=(-2,0),(-2,1) となる.