[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2022年(令和4年)東京工業大学-数学[1]

2022.03.03記

[1] a,b を実数とし,f(z)=z^2+ax+b とする.a,b|a|\leqq1|b|\leqq1 を満たしながら動くとき,f(z)=0 を満たす複素数 z がとりうる値の範囲を複素数平面上に図示せよ.

2022.03.03記
シンプルに行こう。

[解答]

|a|\leqq1 なる実数 a に対して
-1\leqq z(z+a)\leqq 1 なる z の存在範囲を求めれば良い.

ここで a は実数により \mbox{Im}(z)=\mbox{Im}(z+a) であるから,z(z+a) が実数となるための必要十分条件
「(i) z\in\mathbb{R} 」または「(ii) \bar{z}=-z-a」である.

(i) のとき 実数  z(z+a) の値域は -|z|\leqq az\leqq |z| に注意すると
|z|^2-|z|\leqq z^2+az\leqq |z|^2+|z|
となるので,区間 [-1,1][|z|^2-|z|,|z|^2+|z|] が共通部分をもてば良く,それは 区間 [ 0,2]
[|z|^2-|z|+1,|z|^2+|z|+1] が共通部分をもつことで,
|z|^2-|z|+1=\left(|z|-\dfrac{1}{2}\right)^2+\dfrac{3}{4}\gt 0 に注意すると
|z|^2-|z|+1\leqq 2
である.よって |z|\leqq\dfrac{1+\sqrt{5}}{2} が必要十分.

(ii) のとき
\mbox{Re}(z)=-\dfrac{a}{2} かつ -1\leqq z\bar{z}\leqq 1
であるから,
|\mbox{Re}(z)|\leqq\dfrac{1}{2} かつ |z|\leqq 1 が必要十分.

よって(i),(ii) を図示すれば良い

[図示略]

ここまでシンプルな解答速報はまだ見てない(だけできっとどこかにあるだろうが)。このように解くと他の解法ではわかりにくい、結果がシンプルになる理由がわかるだろう.

なお,(ii) は z\not\in\mathbb{R} かつ \bar{z}=-z+a でないといけないと思う人もいるかも知れないが、
本問の場合は、場合の数と違って、別に共通部分のないように場合分けをする必要はなく (i) と(ii) の両方をみたす z があってもかまわない.