[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2019年(平成31年)東京大学-数学(文科)[3]

2020.10.12記

[3] 正八角形の頂点を反時計回りに \mbox{A}\mbox{B}\mbox{C}\mbox{D}\mbox{E}\mbox{F}\mbox{G}\mbox{H} とする.また,投げたとき表裏の出る確率がそれぞれ \dfrac{1}{2} のコインがある.点 \mbox{P} が最初に点 \mbox{A} にある.次の操作を10回繰り返す.

操作:コインを投げ,表が出れば点 \mbox{P} を反時計回りに隣接する頂点に移動させ,裏が出れば点 \mbox{P} を時計回りに隣接する頂点に移動させる.

例えば,点 \mbox{P} が点 \mbox{H} にある状態で,投げたコインの表が出れば点 \mbox{A} に移動させ,裏が出れば点 \mbox{G} に移動させる.

以下の事象を考える.

事象S:操作を10回行った後に点 \mbox{P} が点 \mbox{A} にある.

事象T:1回目から10回目の操作によって,点 \mbox{P} は少なくとも1回,点 \mbox{F} に移動する.

(1) 事象Sが起こる確率を求めよ.

(2) 事象Sと事象Tがともに起こる確率を求めよ.

2019.05.26記
カタラン数を利用して解くこともできるが,かえって面倒な方法しか思いつかなかったので素直に数えあげる.

ちなみに (1) はf(x)=(1+x)^{10}x^4-1 で割った余りの x の係数を1024で割ったものと考えても良い.簡単に求まる訳ではないけど.

[解答]
(1) 表が1,5,9回でる確率だから
\dfrac{{}_{10}\mbox{C}_1+{}_{10}\mbox{C}_5+{}_{10}\mbox{C}_9}{1024}=\dfrac{17}{64}
となる.

(2) 表が1,9回のときは一周するので必ず事象Tが起こる.これらは合計20通り.

表が5回のときについて考える.初めて \mbox{F} に到達するのは3,5,7回目のいずれかである.

(i) 3回目で初めて到達するとき,最初の3回は
裏裏{表表表表表裏裏}
だから 1\times {}_{7}\mbox{C}_2=21 通り

(ii) 5回目で初めて到達するとき,最初の5回は
表表表表表裏裏裏裏裏,
{表裏裏}裏裏{表表表表裏}
だから 1+{}_{3}\mbox{C}_1\times {}_{5}\mbox{C}_1=16 通り

(iii) 7回目で初めて到達するとき,最初の7回は
表{表裏裏裏}裏裏表表表,
裏表{表裏裏}裏裏表表表,
裏裏表{表裏}裏裏表表表
だから {}_{4}\mbox{C}_1+{}_{3}\mbox{C}_1+{}_{2}\mbox{C}_1=9 通り

よって表が5回のときに \mbox{F} に到達する場合の数は46通り.

以上から全部で66通りとなるので求める確率は
\dfrac{66}{1024}=\dfrac{33}{512}
となる.

2019.06.02記
\dfrac{{}_{10}\mbox{C}_1+{}_{10}\mbox{C}_5+{}_{10}\mbox{C}_9}{1024}=\dfrac{17}{64}の計算は
パスカルの三角形を書いて
1,10,45,120,210,252,210,120,45,10,1
から、10+252+10=272を求めて計算するのも良い。

2019.06.23記
(iii) 7回目で初めて到達するとき、最初の7回は
{表裏裏}{表裏}裏裏表表表,
{表表裏}裏裏裏裏表表表
だから{}_{3}\mbox{C}_1\times{}_{2}\mbox{C}_1+{}_{3}\mbox{C}_1=9通り
とした方が簡単か.

いずれにせよ,時計まわりに始めて \mbox{F} に到達するとき,直前2回は「裏裏」でないといけないことがポイント.