[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1963年(昭和38年)京都大学-数学(理系(A型))[2]

2026.01.16.15:21:58記

[2] \triangle\mbox{ABC}\triangle\mbox{DEF} において,\mbox{AB}=\mbox{DE} とし,それぞれの外接円の半径は等しく,また内接円の半径も等しいとする.そのとき 2 つの三角形は合同になるか,理由をつけて答えよ.

本問のテーマ
オイラー・チャップルの定理
外接円の半径と内接円の半径の関係

2026.01.18.18:56:13記
難問です.外接円の半径と正弦定理の関係から,\sin C=\sin F が導かれますが,\angle\mbox{C}\angle\mbox{F} が鈍角と鋭角となっている場合が反例になるのですが,実は注意が必要で,

\angle\mbox{C} が鈍角である \triangle\mbox{ABC} に対して,外接円の半径と内接円の半径と一辺の長さが等しくなるような鋭角三角形が必ず存在するけれども,\angle\mbox{C} が鋭角である \triangle\mbox{ABC} に対して,外接円の半径と内接円の半径と一辺の長さが等しくなるような鈍角三角形が必ず存在するとは限らない.

からです. 旺文社の解答 ではそのことに気付いており「\angle\mbox{C} が鈍角の三角形 \mbox{ABC} を作り,…」と鈍角三角形から出発して反例を作っていますが 聖文社の解答 ではこのことに気付いていない不十分な答案となっています.なお反例の存在を言えば良いので鈍角三角形を次のように具体的に取れば議論はかなり楽になります.次の[解答]で,優弧は長い方の弧で,劣弧は短い方の弧を指しますが,最近は教えられないようです.

[解答]
半径 1 の円に長さ \sqrt{3} の弦 \mbox{AB} をとり,劣弧の中点を \mbox{C} とすると二等辺三角形 \mbox{ABC} の内接円の直径は高さ \dfrac{1}{2} より小さいので,二等辺三角形 \mbox{ABC} の内接円の半径は \dfrac{1}{4} よりも小さい正の値である.

半径 1 の円に長さ \sqrt{3} の弦 \mbox{DE} をとり,優弧の中点を \mbox{F} とすると正三角形 \mbox{DEF} の内接円の半径は \dfrac{1}{2} であり,\mbox{F} を優弧の中点から円周に沿って \mbox{E} に連続的に近づけると内接円の半径も \dfrac{1}{2} から連続的に変化し,0 に近づくので中間値の定理から \triangle\mbox{DEF} の内接円の半径が \mbox{ABC} の内接円の半径と等しくなるような点が存在し,このとき \mbox{DF}\geqq\sqrt{3}\gt \mbox{BC},\mbox{CA} であるから,\triangle\mbox{ABC}\triangle\mbox{DEF} は合同ではない.つまり 2 つの三角形は合同になるとは限らない.

オイラー・チャップルの定理

与えられた三角形の外接円の半径,内接円の半径,外心と内心の距離をそれぞれ R,r,d とするとき,d^2=R^2-2Rr が成り立つという定理をオイラー・チャップルの定理といいます.

オイラー・チャップルの定理から,外接円の半径 R と内接円の半径 r が与えられたとき,内心は,外心を中心とする半径 \sqrt{R^2-2Rr} の円周上に必ずあります.

[大人の解答]
\triangle\mbox{ABC}\triangle\mbox{DEF} の内心をそれぞれ \mbox{I}\mbox{J} とすると,\triangle\mbox{ABC}\equiv\triangle\mbox{DEF}\triangle\mbox{ABI}\equiv\triangle\mbox{DEJ} は同値であるから,内心の位置について考えれば良い,

等しい外接円の半径を R,等しい内接円の半径を r とする.外心を (0,0) とし,\mbox{AB}=\mbox{DE} が y=u-R\lt u\leqq 0)の一部となるように座標をとる.

オイラー・チャップルの定理から,\triangle\mbox{ABC}\triangle\mbox{DEF} の内心は円 x^2+y^2=R^2-2Rr 上にあり,辺 \mbox{AB}=\mbox{DE} から距離 r のところにあるので,\triangle\mbox{ABC}\triangle\mbox{DEF} の内心は円 x^2+y^2=R^2-2Rr と二直線 y=u\pm r の共有点上にある.

(i) u=0 のとき:
x^2+y^2=R^2-2Rr と二直線 y=\pm r の共有点は X=\sqrt{R^2-2Rr-r^2} として (\pm X,\pm r)(複号任意)の形となるので 2 つの(直角)三角形は合同になる.

(ii) u\neq 0 のとき:
x^2+y^2=R^2-2Rr と直線 y=u-r が共有点を持てば,円 x^2+y^2=R^2-2Rr と直線 y=u+r は必ず共有点を持つ.

(a) 円 x^2+y^2=R^2-2Rr と直線 y=u-r が共有点を持たない場合,円 x^2+y^2=R^2-2Rr と直線 y=u+r の共有点は X=\sqrt{R^2-2Rr-(r+u)^2} として (\pm X,u+r) の形となるので 2 つの三角形は合同になる.

(b) 円 x^2+y^2=R^2-2Rr と直線 y=u-r が共有点を持つ場合,円 x^2+y^2=R^2-2Rr と直線 y=u\pm r の共有点は X_1=\sqrt{R^2-2Rr-(r+u)^2}X_2=\sqrt{R^2-2Rr-(r-u)^2}X_1\neq X_2)として (\pm X_1,u+r)(\pm X_2,u-r) の形となり,内心が (\pm X_1,u+r) の三角形と内心が (\pm X_2,u-r) の三角形は合同ではないので,2 つの三角形は合同とは限らない.

反例を1つ挙げれば十分ですが,どのような場合に反例があるかがわかるように書きました.(ii)-(b) のように円 x^2+y^2=R^2-2Rr と直線 y=u-r,直線 y=u+r の両方が共有点を持つ場合にのみ,反例を作ることができることがわかります.そして \triangle\mbox{ABC}\angle\mbox{C} が鈍角である鈍角三角形のとき,その内心は円 x^2+y^2=R^2-2Rr と直線 y=u-r の共有点となるので,円 x^2+y^2=R^2-2Rr と直線 y=u-r が共有点を持てば,円 x^2+y^2=R^2-2Rr と直線 y=u+r は必ず共有点を持つことから,反例となる鋭角三角形が存在することになります.

外接円の半径と内接円の半径の関係

manabitimes.jp
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にもあるように,三角形の内角について \sin A+\sin B+\sin C=4\cos\dfrac{A}{2}\cos\dfrac{B}{2}\cos\dfrac{C}{2} が成り立ちます.そして \triangle\mbox{ABC} の面積を S,内接円の半径を r,外接円の半径を R とすると S=\dfrac{abc}{4R}=\dfrac{1}{2}r(a+b+c) が成立し,正弦定理を用いて角度の情報に変形すると
\dfrac{r}{4R}=\dfrac{abc}{8R^2(a+b+c)}=\dfrac{8R^3\sin A\sin B\sin C}{16R^3(\sin A+\sin B+\sin C)}
=\dfrac{\sin A\sin B\sin C}{8\cos\dfrac{A}{2}\cos\dfrac{B}{2}\cos\dfrac{C}{2}}=\sin\dfrac{A}{2}\sin\dfrac{B}{2}\sin\dfrac{C}{2}
が成立します.このことから本問は

\triangle\mbox{ABC}\triangle\mbox{DEF} において,\sin\dfrac{A}{2}\sin\dfrac{B}{2}\sin\dfrac{C}{2}=\sin\dfrac{D}{2}\sin\dfrac{E}{2}\sin\dfrac{F}{2}\sin C=\sin F が成立するとき,\triangle\mbox{ABC}\equiv\triangle\mbox{DEF} となるか.

という問題になります.

[大人の解答]
条件より,\sin\dfrac{A}{2}\sin\dfrac{B}{2}\sin\dfrac{C}{2}=\sin\dfrac{D}{2}\sin\dfrac{E}{2}\sin\dfrac{F}{2}\sin C=\sin F が成立する.

(i) C=F のとき:A+B=D+E
\log\sin\dfrac{A}{2}+\log\sin\dfrac{B}{2}=\log\sin\dfrac{D}{2}+\log\sin\dfrac{E}{2}
が成立する.0\lt x\lt \dfrac{\pi}{2}(\log\sin x)''=-\dfrac{1}{\sin^2 x} から y=\log\sin x は上に凸となるので,\{A,B\}=\{D,E\} となる.

(ii) C+F=180^{\circ}C\gt F のとき:D+E=C

g(A)=\sin\dfrac{A}{2}\sin\dfrac{F-A}{2}\tan\dfrac{C}{2}=\dfrac{\sin\dfrac{A}{2}\sin\dfrac{F-A}{2}}{\tan\dfrac{F}{2}}

f(D)=\sin\dfrac{D}{2}\sin\dfrac{C-D}{2}=\sin\dfrac{D}{2}\cos\dfrac{F+D}{2}

とおくと,与えられた A0\lt A\lt F)に対して g(A)=f(D) を満たす D0\lt D\lt C であるが,C\gt F により,0\lt D\lt F で存在すれば十分)が存在すれば \triangle\mbox{ABC}\not\equiv\triangle\mbox{DEF} となる反例が存在する.

ここで h(x)=\dfrac{f(x)-g(x)}{\sin\dfrac{x}{2}}=\cos\dfrac{F+x}{2}-\dfrac{\sin\dfrac{F-x}{2}}{\tan\dfrac{F}{2}}0\lt x\lt F
とおくと,0\lt\tan\dfrac{F}{2}\lt 1 に注意して,
\displaystyle\lim_{x\to +0} h(x)=0
h'(x)=-\dfrac{1}{2}\sin\dfrac{F+x}{2}+\dfrac{1}{2}\dfrac{\cos\dfrac{F-x}{2}}{\tan\dfrac{F}{2}}
\gt-\dfrac{1}{2}\sin\dfrac{F+x}{2}+\dfrac{1}{2}\cos\dfrac{F-x}{2}
=\dfrac{1}{2}\left(\cos\dfrac{F}{2}-\sin\dfrac{F}{2}\right)\left(\cos\dfrac{x}{2}-\sin\dfrac{x}{2}\right)\gt 0
(∵ 0\lt \dfrac{x}{2}\lt \dfrac{F}{2}\lt 45^{\circ}
であるから,0\lt x\lt Fh(x)\gt 0 が成立する.

よって,0\lt x\lt Ff(x)\gt g(x) となり,よって f(A)\gt g(A) が成立する.

このことと f,g の連続性から,任意の A に対してf(D)=g(A) を満たす 0\lt D\lt A(\lt F) が存在するので, \triangle\mbox{ABC}\not\equiv\triangle\mbox{DEF} となる反例が存在する.