[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

1966年(昭和41年)京都大学-数学(理系)新課程[2]

2026.02.02.10:31:08記

[2] (i) 平行四辺形 \mbox{ABCD} が与えられている.この中に最大面積の三角形 \mbox{PQR} がはいっている. \triangle\mbox{PQR} の位置について,次のことを証明せよ.

(イ) 頂点 \mbox{P}\mbox{Q}\mbox{R} は平行四辺形 \mbox{ABCD} の周上にある.

(ロ) \triangle\mbox{PQR} の少なくとも一辺は,平行四辺形 \mbox{ABCD} の一辺と一致する.

(ii) 面積が 1 の三角形は,面積が 2 より小さい平行四辺形の中には,はいらないことを証明せよ.

本問のテーマ
三角形の面積公式(横幅×縦軸に沿う長さ)

2026.02.07.00:35:42記
\mbox{O}(0,0)\mbox{A}(a,c)\mbox{B}(b,d) で作られる三角形 \mbox{OAB} の面積が \dfrac{1}{2}|ad-bc| となるのは良く知られていますが,その証明として,線分 \mbox{AB} の横幅(x座標の差)を l\mbox{O} から直線 \mbox{AB} への縦の長さ(y 軸に沿う長さ)を h とするときに \dfrac{1}{2}lh となることを利用するものがあります.a=b のときなどの細かい議論は省きますが,直線 \mbox{AB}y=\dfrac{d-c}{b-a}(x-a)+c ですから,l=|b-a|h=\left|\dfrac{d-c}{b-a}(-a)+c\right| となり,三角形 \mbox{OAB} の面積は \dfrac{1}{2}|(d-c)(-a)+c(b-a)|=\dfrac{1}{2}|bc-ad| となる,というように導くことができます.

[大人の解答]
(i) 平行四辺形を単位正方形にアファイン変換すると三角形は三角形に移り,その面積は横幅×縦の長さの半分となるが,横幅,縦の長さは 1 以下であるから,その面積は \dfrac{1}{2} 以下となり,面積が \dfrac{1}{2} となるのは横幅も縦の長さも 1 であることから,横幅を与える辺は単位正方形の一辺に一致し,その辺の両端でない頂点は単位正方形の一辺の対辺上になければならない.逆にこの条件を満たしていれば面積が \dfrac{1}{2} となる.このアファイン変換は縮退していないので逆変換が存在し,その逆変換を考えることにより,(イ)(ロ)は満たされる.

x,y\gt 0 のとき,\vec{a},\vec{b} で張られる三角形の面積と x\vec{a},y\vec{b} で張られる三角形の面積の面積比は 1:xy となります.より一般的に
x,y,z,w\gt 0 のとき,\vec{a},\vec{b} で張られる三角形の面積と x\vec{a}+y\vec{b},z\vec{a}+w\vec{b} で張られる三角形の面積の面積比は 1:xw-yz行列式)となります.

[解答1]
一般に \vec{a},\vec{b} で張られる三角形の面積を D(\vec{a},\vec{b})(符号付き面積ではないとする)とおくと,
D(\vec{b},\vec{a})=D(\vec{a},\vec{b})
D(k\vec{a},\vec{b})=|k|\cdot D(\vec{a},\vec{b})
D(\vec{a},k\vec{a}+\vec{b})=D(\vec{a},\vec{b})\vec{a}を底辺と見ると高さは同じ)
が成立する.よって D(x\vec{a}+y\vec{b},z\vec{a}+w\vec{b}) について

(あ) x=0 のとき:
D(x\vec{a}+y\vec{b},z\vec{a}+w\vec{b})=D(y\vec{b},z\vec{a}+w\vec{b})=|y|\cdot D(\vec{b},z\vec{a}+w\vec{b})=|y|\cdot D(\vec{b},z\vec{a})=|yz|\cdot D(\vec{a},\vec{b})

(い) x\neq 0 のとき:
D(x\vec{a}+y\vec{b},z\vec{a}+w\vec{b})=D(x\vec{a}+y\vec{b},(w-zy/x)\vec{b})=\left|w-\dfrac{zy}{x}\right| \cdot D(x\vec{a}+y\vec{b},\vec{b})=\left|w-\dfrac{zy}{x}\right| \cdot D(x\vec{a},\vec{b})=|xw-zy| \cdot D(\vec{a},\vec{b})

となり,いずれにせよ |xw-zy| \cdot D(\vec{a},\vec{b}) が成立する.

さて,\overrightarrow{\mbox{AB}}=\vec{b}\overrightarrow{\mbox{AC}}=\vec{c} とおき,\overrightarrow{\mbox{AP}}=p_1\vec{b}+p_2\vec{c}\overrightarrow{\mbox{AQ}}=q_1\vec{b}+q_2\vec{c}\overrightarrow{\mbox{AR}}=r_1\vec{b}+r_2\vec{c} とおくと,p_1r_20以上1以下の実数である.

ここで p_1\leqq q_1\leqq r_1p_1\lt r_1)としても一般性を失なわず,r_1-q_1=\betaq_1-p_1=\alpha\alpha,\beta\geqq 0\alpha+\beta\leqq 1)とおくことにする.

このときT=\dfrac{2\triangle\mbox{PQR}}{\mbox{四角形}\mbox{ABCD}} について
T=|(q_1-p_1)(r_2-p_2)-(q_2-p_2)(r_1-p_1)|=|\alpha(r_2-p_2)-(\alpha+\beta)(q_2-p_2)|=|\alpha(r_2-q_2)+\beta(p_2-q_2)|
が成立する.

三角不等式により
T\leqq \alpha|r_2-q_2|+\beta|p_2-q_2|
であり,さらに 0\leqq|r_2-q_2|\leqq 10\leqq|p_2-q_2|\leqq 1 により
T\leqq \alpha|r_2-q_2|+\beta|p_2-q_2|\leqq \alpha+\beta=1
が成立する.両方の等号が成立する場合について場合分けする.

(a) \alpha |r_2-q_2|=0 のとき:
\beta = |p_2-q_2|=1 により
\alpha=q_1-p_1=0\beta=r_1-q_1=1|p_2-q_2|=1 であるから,
(p_1,p_2)=(0,0)(q_1,q_2)=(0,1)r_1=1 または
(p_1,p_2)=(0,1)(q_1,q_2)=(0,0)r_1=1
となり,一辺が \mbox{AC} で,残りの頂点が \mbox{BD} 上にあれば良く,(イ)(ロ)を満たす.

(b) \alpha |r_2-q_2|=1 のとき:
\alpha=q_1-p_1=1\beta=r_1-q_1=0|r_2-q_2|=1 であるから,
p_1=0(q_1,q_2)=(1,0)(r_1,r_2)=(1,1) または
p_1=0(q_1,q_2)=(1,1)(r_1,r_2)=(1,0)
となり,一辺が \mbox{BD} で,残りの頂点が \mbox{AC} 上にあれば良く,(イ)(ロ)を満たす.

(c) 0\lt \alpha |r_2-q_2|\lt 1 のとき:
\alpha+\beta = r_1-p_1=1|p_2-q_2|=|r_2-q_2|=1 であるから,
(p_1,p_2)=(0,1)q_2=0(r_1,r_2)=(1,1)
つまり一辺が \mbox{CD} で,残りの頂点が \mbox{AB} 上にあれば良い,
または
(p_1,p_2)=(0,0)q_2)=1(r_1,r_2)=(1,0)
つまり一辺が \mbox{AB} で,残りの頂点が \mbox{CD} 上にあれば良い,
であるから,(イ)(ロ)を満たす.

以上,全ての場合(イ)(ロ)を満たし,これらのとき \triangle\mbox{PQR} の面積は平行四辺形 \mbox{ABCD} の半分となる.

(ii) (i)により平行四辺形の内部にある三角形の面積は,平行四辺形の面積の半分以下となるので,面積が 1 の三角形は,面積が 2 より小さい平行四辺形の中には,はいらない.

このあたりの話を幾何的に行うと次のようになります.まずは大雑把な解法(答案としては十分だと思います)を述べてから,少し神経質に場合分けした解法を述べることにします.

[解答2]
(ロ)(あ) \mbox{P},\mbox{Q},\mbox{R} のうち 2 点が平行四辺形の同じ辺(頂点はどちらの辺と考えても良い)にあるとき,その 2 点がその辺の両端となるように動かすと面積は大きくなるので(ロ)を満たす.

(い) \mbox{P},\mbox{Q},\mbox{R} が全て異なる平行四辺形の辺(頂点はどちらの辺と考えても良い)にあるとき,\mbox{P} が線分 \mbox{AB} 上,点 \mbox{Q} が線分 \mbox{BC} 上,\mbox{R} が線分 \mbox{AD} 上にあるとしても一般性を失わず,このとき点 \mbox{P} を通り \mbox{BC} に平行な直線と線分 \mbox{QR} の交点を \mbox{S} とし,\mbox{BC} を底辺とみた平行四辺形の高さを h とすると \triangle\mbox{PQR}=\dfrac{1}{2}\cdot\mbox{PS}\cdot h となるので,\mbox{Q},\mbox{R}\mbox{C},\mbox{D} に動かすと \triangle\mbox{PQR} の面積が大きくなるので \triangle\mbox{PQR} が最大であることに反する.よって(ロ)が成立する.

以上(あ)(い)から(ロ)が成立する.

(イ)(ロ)を満たすとき,つまり \mbox{P},\mbox{Q},\mbox{R} のうちの 2 点が平行四辺形の 1 辺をなすとき,\triangle\mbox{PQR} の面積は,残りの頂点が対辺上にあるときに最大となり,平行四辺形の面積の半分となる.

なお(い)は点 \mbox{P} を通り \mbox{BC} に平行な直線と線分 \mbox{CD} の交点を \mbox{T} とし,
\triangle\mbox{PQR}\leqq (\mbox{四角形PQTR})=\triangle\mbox{PCD}
と評価しても良いでしょう.

では少し神経質に場合分けした解法です.

[解答3]
(i)(イ) \triangle\mbox{PQR} のある頂点が平行四辺形の内部にあるとする.その点を \mbox{P} としても一般性を失わない.このとき,線分 \mbox{PQ}\mbox{P} の側に延長して平行四辺形との交点を \mbox{P}' とするとき,\triangle\mbox{PQR}\triangle\mbox{P}'\mbox{QR} について \mbox{PQ}\mbox{P}'\mbox{Q} を底辺とみると高さは等しいので \triangle\mbox{PQR}\lt \triangle\mbox{P}'\mbox{QR} となり,\triangle\mbox{PQR} が最大であることに反する.よって(イ)が成立する.

(ロ) \triangle\mbox{PQR} のある頂点が平行四辺形の頂点にないとする.その点を \mbox{P} とし,\mbox{P} が線分 \mbox{AB} 上(両端に除く)にあるとしても一般性を失わない.このとき \mbox{Q},\mbox{R} は折れ線 \mbox{BCDA} 上(両端に除く)にある.

(あ) \mbox{Q},\mbox{R} が折れ線をなす 3 つの線分のうち同じ線分上(両端を除く)にあるとき:
\mbox{Q},\mbox{R} をその線分の両端に動かせば面積が大きくなるので \triangle\mbox{PQR} が最大であることに反する.よって(ロ)が成立する.

(い) \mbox{Q},\mbox{R} が折れ線をなす 3 つの線分のうち隣りあう線分上(両端を除く)にあるとき:
\mbox{Q} が線分 \mbox{BC} 上(両端に除く),\mbox{R} が線分 \mbox{CD} 上(両端に除く)にあるとしても一般性を失わず,このとき \mbox{PQ} を底辺と考えると \triangle\mbox{PQR}\lt\triangle\mbox{PQD}\mbox{PD} を底辺と考えると \triangle\mbox{PQD}\lt\triangle\mbox{PCD} となるので,\mbox{Q},\mbox{R}\mbox{C},\mbox{D} に動かすと \triangle\mbox{PQR} の面積が大きくなるので \triangle\mbox{PQR} が最大であることに反する.よって(ロ)が成立する.

(う) \mbox{Q},\mbox{R} が折れ線をなす 3 つの線分のうち向いあう線分上(両端を除く)にあるとき:
\mbox{Q} が線分 \mbox{BC} 上(両端に除く),\mbox{R} が線分 \mbox{AD} 上(両端に除く)にあるとしても一般性を失わず,このとき点 \mbox{P} を通り \mbox{BC} に平行な直線と線分 \mbox{QR} の交点を \mbox{S} とし,\mbox{BC} を底辺とみた平行四辺形の高さを h とすると \triangle\mbox{PQR}=\dfrac{1}{2}\cdot\mbox{PS}\cdot h となるので,\mbox{Q},\mbox{R}\mbox{C},\mbox{D} に動かすと \triangle\mbox{PQR} の面積が大きくなるので \triangle\mbox{PQR} が最大であることに反する.よって(ロ)が成立する.

以上(あ)(い)(う)から(ロ)が成立する.

(イ)(ロ)を満たすとき,つまり \mbox{P},\mbox{Q},\mbox{R} のうちの 2 点が平行四辺形の 1 辺をなすとき,\triangle\mbox{PQR} の面積は,残りの頂点が対辺上にあるときに最大となり,平行四辺形の面積の半分となる.

(ii) (i)により平行四辺形の内部にある三角形の面積は,平行四辺形の面積の半分以下となるので,面積が 1 の三角形は,面積が 2 より小さい平行四辺形の中には,はいらない.

頂点にないことを細かく場合分けしましたが,実際はそこまで気にしなくて良いと思います.

2026.02.08記
細かいことですが,[大人の解答]と[解答1]では最大となる必要十分条件を求め,その最大となる三角形はいずれも(イ)(ロ)を満たしているという証明方法です.それに比べて[解答2]と[解答3]は「(イ)(ロ)の満たさない三角形はより面積を大きくすることができる」ことを示すという証明方法です.本来ならば「(イ)(ロ)の満たさない三角形はより面積を大きくすることができる」ことを述べただけでは証明としては不完全です.というのは「平行四辺形の中に入る三角形の中に面積が最大のものが存在する」ことは明らかではないからです.しかし問題文に「面積最大の三角形がはいっている」という形で「面積最大の三角形の存在」を認めているので本問の場合は正しい証明となっています.[解答2]と[解答3]ではそのような事情もあって

「(イ)(ロ)を満たすとき,つまり \mbox{P},\mbox{Q},\mbox{R} のうちの 2 点が平行四辺形の 1 辺をなすとき,\triangle\mbox{PQR} の面積は,残りの頂点が対辺上にあるときに最大となり,平行四辺形の面積の半分となる」

という文言を記載することによって「最大値が存在するならば(イ)(ロ)が成立することが必要であり,その条件のもとで最大値を求めると平行四辺形の面積の半分となる」という形で最大値を与える三角形が存在することを明示しています.