[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2016年(平成28年)京都府立大学生命環境(環境・情報)-数学[1]

2022.10.12記

[1] \alpha\beta を正の無理数とする.2つの集合 A,B
A=\{[n\alpha]\,|\,n=1,2,3,\ldots\}B=\{[n\beta]\,|\,n=1,2,3,\ldots\}
で定める.集合CABの共通部分とする.集合 DAB の和集合とする.\dfrac{1}{\alpha}+\dfrac{1}{\beta}=1 のとき以下の問いに答えよ.ただし,実数 x に対して,xを超えない最大の整数を [x]と表す.

(1) C空集合となることを示せ.

(2) E=\{n\,|\,n=1,2,3,\ldots,99\}のとき,ED の部分集合であることを示せ.

本問のテーマ
レイリー(Rayleigh)の定理
2022.10.12記
D自然数の集合に一致する.

[解答]
(1) C空集合でないと仮定すると,ある自然数 k が存在して C の要素となる.このとき,ある自然数 m,n が存在して
[m\alpha]=[n\beta]=k
が成立する.\alpha,\beta無理数であることに注意すると
k\lt m\alpha\lt k+1k\lt n\beta\lt k+1
であるから
k\left(\dfrac{1}{\alpha}+\dfrac{1}{\beta}\right)\lt m+n\lt (k+1)\left(\dfrac{1}{\alpha}+\dfrac{1}{\beta}\right)
が成立する.ここで\dfrac{1}{\alpha}+\dfrac{1}{\beta}=1より
k\lt m+n \lt k+1
となるが,m+n自然数であるから矛盾する.よって C空集合である.

(2) ある自然数 kD に含まれないと仮定する.このとき,ある自然数 m,n が存在して
m\alpha\lt k,k+1\lt (m+1)\alpha
n\beta\lt k,k+1\lt (n+1)\beta
が成立する.それぞれの左側の不等式から
m+n\lt k\left(\dfrac{1}{\alpha}+\dfrac{1}{\beta}\right)=k
が導かれ,それぞれの右側の不等式から
 k+1=(k+1)\left(\dfrac{1}{\alpha}+\dfrac{1}{\beta}\right)\lt m+n+2
となり,
k-1\lt m+n\lt k
となるが,m+n自然数であるから矛盾する.よって D に含まれない自然数は存在しない,つまり D自然数の集合に一致するので,ED の部分集合である.

(1)(2)より,任意の自然数AB の一方のみに属することがわかる.

[別解]
(2) N以下の Aの要素の数は
[n\alpha]\leqq N から n\leqq\dfrac{N}{\alpha} となるので \left[\dfrac{N+1}{\alpha}\right] 個であり,
同様に N以下の Bの要素の数は \left[\dfrac{N+1}{\beta}\right] 個である.

ここで2つのガウス記号の中身が無理数であることに注意すると
\dfrac{N+1}{\alpha}-1\lt \left[\dfrac{N+1}{\alpha}\right] \lt \dfrac{N+1}{\alpha}
\dfrac{N+1}{\beta}-1\lt \left[\dfrac{N+1}{\beta}\right] \lt \dfrac{N+1}{\beta}
が成立するので辺々加えて
N-1\lt \left[\dfrac{N+1}{\alpha}\right]+\left[\dfrac{N+1}{\beta}\right] \lt N+1
となり,
\left[\dfrac{N+1}{\alpha}\right]+\left[\dfrac{N+1}{\beta}\right]=N
となる.よって(1)から N以下の自然数は必ず AB の一方のみに属することがわかる.

レイリーの定理は
Wythoff's game - Wikipedia
の必勝法と関係がある.具体的には黄金比\varphi=\dfrac{1+\sqrt{5}}{2} を用いて
\alpha=\phi\beta=\phi^2=1+\phi
としたときのレイリーの定理と関係がある.
Wythoffの 二 山 崩 しに つ いて(pdf)