[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2026年(令和8年)京都大学理学部特色入試・数理科学入試-数学[2]

2025.11.15記

[2] N自然数とする.コインを N 回投げ,関数 f_0(x)f_1(x),…,f_N(x) を次で帰納的に定める.

f_0(x)=e^x
f_n(x)=\begin{cases} f'_{n-1}(x) & (n回目に投げたコインが表の場合) \\ xf_{n-1}(x) & (n回目に投げたコインが裏の場合) \end{cases}

このとき,f_N(0) が奇数である確率を求めよ.ただし,コインを投げて出る結果は各回で独立であり,コインを 1 回投げたときに表と裏が出る確率はそれぞれ \dfrac{1}{2} であるとする.

2025.11.15記
例えば表裏の順に出た場合には f_2(x)=xe^x となり,例えば裏表の順に出た場合,f_2(x)=(x+1)e^x となります.つまり表や裏の出た回数を考えるのでは駄目であることがわかります.とりあえず小さい N で実験してみましょう.

N=1 のとき
e^x,xe^x が確率 \dfrac{1}{2} ずつなので f_1(0) が奇数となる確率は \dfrac{1}{2} となります.

N=2 のとき
e^x,xe^x,(x+1)e^x,x^2e^x が確率 \dfrac{1}{4} ずつなので f_2(0) が奇数となる確率は \dfrac{1}{2} となります.

N=3 のとき
e^xxe^x,(x+1)e^x,(x+2)e^x,x^2e^x,(x^2+x)e^x,(x^2+2x)e^x,x^3e^x
が確率 \dfrac{1}{8} ずつなので f_3(0) が奇数となる確率は \dfrac{1}{4} となります.

N=4 のとき
e^x,xe^x,(x+1)e^x,(x+2)e^x,(x+3)e^x,x^2e^x,(x^2+x)e^x(x^2+2x)e^x,(x^2+2x)e^x,(x^2+3x+1)e^x,(x^2+4x+2)e^xx^3e^x,(x^3+x^2)e^x(x^3+2x^2)e^x(x^3+3x^2)e^x,x^4e^x が確率 \dfrac{1}{16} ずつなので f_4(0) が奇数となる確率は \dfrac{1}{4} となります.

という訳で半々になる訳ではなさそうです.ここまでで題意を満たすのは
表,表表,裏表,表表表,表裏表,表表表表,表表裏表,裏表裏表,裏表表表
の場合なので,後ろから2個ペアずつ組むと「表表」か「裏表」となるので,\dfrac{1}{2^{\left[\frac{N+1}{2}\right]}} となることが予想されます.

[解答]
f_n(x)=g_n(x)e^x とおくと f_n(0)=g_n(0) であり,

g_0(x)=1
g_n(x)=\begin{cases} g_{n-1}(x)+g'_{n-1}(x) & (n回目に投げたコインが表の場合) \\ xg_{n-1}(x) & (n回目に投げたコインが裏の場合) \end{cases}

が成立し,g_{n}(x) は整数係数の n 次以下の多項式となる.ここで g_{n}(x) の1次以下の項を a_n x+ b_n とおくと
a_{n+1}x+b_{n+1} は mod 2 で
a_n x+ b_n(表表),(a_n+b_n)x+0(表裏),b_nx+b_n(裏表),0x+0(裏裏)
のいずれかとなる(それぞれの確率は \dfrac{1}{4}).ここで x^2微分2x となるので,mod 2 で考えると消えることに注意しておく.

よって f_N(0) が偶数ならば f_{N+2}(0) は必ず偶数で,f_N(0) が奇数ならば f_{N+2}(0) は確率 \dfrac{1}{2} で奇数となり,求める確率を p_N とおくと p_{N+2}=\dfrac{1}{2}p_N が成立する.

ここで N=1 のとき g_1(x)1,x が確率 \dfrac{1}{2} ずつなので f_1(0) が奇数となる確率は \dfrac{1}{2} であり,N=2 のとき g_2(x)1,x,x+1,x^2 が確率 \dfrac{1}{4} ずつなので f_2(0) が奇数となる確率は \dfrac{1}{2} であるから,求める確率は p_N=\dfrac{1}{2^{\left[\frac{N+1}{2}\right]}} となる.

2025.11.29記

確かに D=\dfrac{d}{dx}x の交換子積は [D,x]=1 となっていて,[D^2,x]=2D[D,x^2]=2x が成立するので mod 2 で考えると演算子において Dx^2x^2D,および D^2xxD^2 に入れ換えても f_N(0) の偶奇が不変であることがわかります.

例えば,表裏裏表裏の順番に出ると xDxxD という演算子になりますが,これは mod 2 で
x(Dx^2)D\equiv x(x^2D)D=x^3D^2=x^3
と等価になりますので,f_5(x)=(x^3+(偶数係数の3次以下の多項式))e^x となり,f_5(0)=0 であることがわかります.同じように表裏表裏表の順番に出ると DxDxD という演算子になりますが,これは mod 2 で
Dx(xD+1)D=Dx^2D^2+DxD\equiv x^2D^3+(xD+1)D=x^2D^3+xD^2+D=x^2+x+1
と等価になりますので,f_5(x)=(x^2+x+1+(偶数係数の2次以下の多項式))e^x となり,f_5(0)=1 であることがわかります.

本問の場合は「右端の D1 となる」,「D^21 となる」,「Dx」は「xD+1」に変える」,「Dx^2」は「x^2D」に変える」というルールで変形することができるので,先程の2つの例の場合,
xDxxD\to xDx^2\to xx^2D\to x^3
DxDxD\to DxDx\to (xD+1)Dx\to x^2+Dx\to x^2+xD+1\to x^2+x+1
と変形することができます.

本問の場合,最後が裏だと x\cdots となるので f_N(0)0 で偶数です.
最後が表の場合,D\cdots となりますが,Dx\cdots =(xD+1)\cdots\equiv 1\cdots
DD\cdots =D^2\cdots\equiv 1\cdots により f_N(0)=f_{N-2}(0) となります.

この交換子積が 1 となる関係,確かに量子力学で学んだ生成消滅演算子の関係
[\hat{a},\hat{a}^{\dagger}]=1
でした.

生成消滅演算子 - Wikipedia
生成演算子と消滅演算子 - EMANの量子力学