[別館]球面倶楽部零八式markIISR

東大入試数学中心。解説なので解答としては不十分。出題年度で並ぶようにしている。大人の解法やうまい解法は極めて主観的に決めている。

2018年(平成30年)九州大学前期-数学III[5]

2026.08.16.23:55:19記

[5] \alpha を複素数とする.等式
\alpha(|z|^2+2)+i(2|\alpha|^2+1)\overline{z}=0
を満たす複素数 z をすべて求めよ.ただし,i は虚数単位である.

2026.08.16.23:55:19記
ちょっとしたことに気付くかどうかという問題です.そのちょっとしたことに気付くのが難しいので難問という評価(大数ではD評価)がありますが,数学毛布のやり方である「変数を分離せよ」を思い出せば,少なくとも与えられた等式を
\dfrac{\alpha}{2|\alpha|^2+1}=-i\dfrac{\overline{z}}{|z|^2+2}…(★)
\alphaz が分離できるように変形してみたくなると思います.

すると(|z|=|\alpha|=0 でない場合には),動径の長さが等しくなるという条件と偏角に関する条件である
\dfrac{|\alpha|}{2|\alpha|^2+1}=\dfrac{|z|}{|z|^2+2}(両辺の絶対値から動径の長さに関する条件),
\dfrac{\alpha}{|\alpha|}=-i\dfrac{\overline{z}}{|z|}\Leftrightarrow\dfrac{z}{|z|}=-i\dfrac{\overline{\alpha}}{|\alpha|})(動径の条件を用いて偏角に関する条件),
に分けて考えることができます.

ここで動径の長さに関する条件は,|z| に関する高々二次方程式となるので |z||\alpha| で表すことができ,その結果を偏角に関する条件に代入すれば
z=-i\dfrac{\mbox{($|z|$ を $|\alpha|$ で表した結果)}}{|\alpha|}\cdot \overline{\alpha}
z を求めることができます.

なお,2|\alpha|^2+1|z|^2+2 が正の実数となることから,z=-ik\overline{\alpha} を満たす正の実数 k が存在することがわかるので,[うまい解法]のように k を求める方針(実はこちらを先に思いついたので[うまい解法]から書きます)も良いでしょう.やっていることは先ほど述べた |z||\alpha| で表すのではなく,k=\dfrac{|z|}{|\alpha|}|\alpha| で表すという方針に相当しています.つまり
z=-i\mbox{($\dfrac{|z|}{|\alpha|}$ を $|\alpha|$ で表した結果)}\cdot \overline{\alpha}
によって z を求めています.

既に述べたように,本問の場合はうまく z\alpha が分離できる単純な設定となっているので動径の長さに関する条件と偏角に関する条件をうまく分離することができます.ですから,z\alpha の偏角を設定して偏角の関係式を導くのは遠回りです.実際偏角に関する条件
\dfrac{\alpha}{|\alpha|}=-i\dfrac{\overline{z}}{|z|}
から,z の偏角 \theta\alpha の偏角 \varphi について \varphi=-\theta-\dfrac{\pi}{2}\mbox{mod}\,2\pi) となることは直ちにわかります.

[うまい解答]
z=-i\dfrac{|z|^2+2}{2|\alpha|^2+1}\overline{\alpha} と変形でき,\dfrac{|z|^2+2}{2|\alpha|^2+1}\gt 0 であるから,z=-ik\overline{\alpha}k\gt 0)とおくことができる.

このとき |z|=k|\alpha|=\dfrac{|z|^2+2}{2|\alpha|^2+1}|\alpha| であるから,
|\alpha|=0…①または k=\dfrac{k^2|\alpha|^2+2}{2|\alpha|^2-1}…②が成立する.

①のとき z=\alpha=0 となるが,これは等式を満たしているので適する.

②のとき整理して (k-2)(|\alpha|^2k-1)=0 となり,k=2,\dfrac{1}{|\alpha|^2} となる.よって
z=-2i\overline{\alpha}-i\dfrac{\overline{\alpha}}{|\alpha|^2}
となる.

よって求める答えは
\begin{cases} z=0 & (\alpha=0) \\ z=-2i\overline{\alpha},-i\dfrac{\overline{\alpha}}{|\alpha|^2} & (\alpha\neq 0) \end{cases}
となる.

注)
|\alpha|=\dfrac{1}{\sqrt{2}} のときには 2 つの z は一致する.

-i\dfrac{\overline{\alpha}}{|\alpha|^2}-\dfrac{i}{\alpha} と変形することができますが,その必要があるかと言われると個人的にはどちらでも良いです(分母の有理化をすべきかどうかという話と同じです).

[解答]
\dfrac{\alpha}{2|\alpha|^2+1}=-i\dfrac{\overline{z}}{|z|^2+2},つまり
\dfrac{z}{|z|^2+2}=-i\dfrac{\overline{\alpha}}{2|\alpha|^2+1}…(★)
と変形できる.

(i) |\alpha|=0 のとき:
(★)から z=0 となる.

(ii) |\alpha|\neq 0 のとき:
(★)から z\neq 0 であり,(★)は動径の長さと偏角に関する条件に分離することにより,

\dfrac{|\alpha|}{2|\alpha|^2+1}=\dfrac{|z|}{|z|^2+2}…①
かつ
\dfrac{z}{|z|}=-i\dfrac{\overline{\alpha}}{|\alpha|}\Leftrightarrow z=-i\dfrac{|z|}{|\alpha|}\,\overline{\alpha}…②

と考えることができる.①を整理して
|\alpha|\,|z|^2-(2|\alpha|^2+1)|z|+2|\alpha|=(|\alpha|\,|z|-1)(|z|-2|\alpha|)=0
となるので,|z|=2|\alpha|,\dfrac{1}{|\alpha|} となり,②から
z=-2i\overline{\alpha}-i\dfrac{\overline{\alpha}}{|\alpha|^2}
を得る.

よって求める答えは
\begin{cases} z=0 & (\alpha=0) \\ z=-2i\overline{\alpha},-i\dfrac{\overline{\alpha}}{|\alpha|^2} & (\alpha\neq 0) \end{cases}
となる.